雪掻き。
 それは豪雪地帯の冬の風物詩ともいえる日常的イベントである。
 昨晩のレオンさんの言動が原因か定かではないが、夜のうちに降った雪が、銀のうさぎ亭の前面を塞ぐように、膝くらいの高さまで積もっていた。

 公道は王室より依頼を受けた専門の業者が、早朝含め日に何度か除雪してくれるのだが、私有地や個人の建物の近くなんかは手付かずだ。

 除雪の際にうっかり建物や個人の所有物などを傷つけたりなんかしたらトラブルに発展しかねないから。というのがその理由らしい。

 そんな業者に依頼する余裕もないうちみたいなお店は、自然と従業員である私達が雪掻きする事になる。


 公道の両脇には石の蓋に覆われた水路がある。一部の蓋は金属製で、除雪の際はそこを取り外して雪を放り込めば、後は水と共に流れていくようにできている。けれど、町のみんなが一斉にそれをしたら、たちまち水路が雪で詰まって水が地上へと溢れ出す。そんな事になったらあたりは大惨事だ。

 なので、地区ごとに水路を利用できる時間帯が決まっている。ちなみに銀のうさぎ亭は朝6時から7時までが水路利用可能時間帯だ。お店の開店時間は11時だというのに早すぎではないか。

 しかし、国が定めた事には逆らえず、私は眠い目を擦りながら、雪掻きの支度を始めるのだった。