学校の調理実習で習った料理の中に、何か作れそうなものあったかなあ……
 悩みながら、ぬるま湯を満たしたたらいとタオルを持って男性客の元へ戻る。ついでに温かいお茶も一緒に。

「あの、申し訳ありませんが、今は簡単なお料理しかお出しできそうになくて……サンドイッチでも構いませんか?」
「ああ、早く食べられれば何でもいい」

 男性は俯いたまま答える。
 凍えた手を温めるようにお茶のカップを手で包み込みながら。

 その答えを聞いて安堵した。サンドイッチなら私でも作れる。なにしろパンに具を挟めば良いだけなのだから。楽勝だ。うん。きっとそうだ。
 そういえば、前に観たテレビ番組で美味しいハムサンドの作り方を紹介してたっけ。確か蒸し器でパンを蒸すとか、レタスを茹でるとか……
 …………

 いや、そんな面倒な事無理無理。ここは手抜きサンドイッチで我慢してもらおう。