みんなの視線を受けながら、星乃はそのままゆっくりと蜂谷先生に近づく。

「蜂谷先生、もう私の顔を忘れてしまったんですか? 毎日のようにここへ押しかけて、昨日は似顔絵まで描いてくれたのに」

 言いながら、雪夜の隣に並んで立つ。

「この人は演劇部の望月雪夜先輩。女子どころか男子です。ここに来てからずっと先生の眼の前にいたのは私じゃなくて望月先輩だったんですが、気がつきませんでした? 私達、そんなに似てます?」

 星乃は蜂谷先生の顔を覗き込むように見つめる。

「確かに、似たような背格好で、服や髪型まで同じなら、一瞬勘違いしてしまう事もあるかもしれません。現に赤坂先輩も、さっきまで気づいていませんでしたからね。でも、不思議ですね。どうして蜂谷先生は、望月先輩の顔まで見た上で私だと認識して、更にありもしないほくろを似顔絵に描き足したんですか?」

 蜂谷先生は何も答えない。

 星乃は言葉を続ける。

「先生には、無いはずのものが見えたんですか? それとも、あるはずのものが見えなかったんですか?」