心残り?

「と、いうと?」

「入部できない理由も、先生が絵を描けない理由も赤坂先輩から聞きました。でも、それでももう一度先生の描く肖像画が見たいなあ。顔の塗り潰されていないちゃんとした絵が。きっと素晴らしいんだろうなあ……」

 確かに、俺の腹の蛙を鳴かすほどの林檎を作ったあの先生だ。どんな絵を描くのか興味はある。けれど、赤坂の話ぶりによると簡単にはいきそうにない。なにか絵を描くための理由でもあれば――

 しばし考えたのち

「本当にそれでいいんだな? このままフリー美術部員で」

 俺は念を押すように星乃に尋ねる。

「ええ、この際それでもいいかなーって」

「肖像画とまではいかないが、先生の絵を見る方法ならあるかもしれない」

 思わずというように星乃は俺の顔を見る。その瞳はまっすぐにこちらをみつめていながらも、目を瞠って驚きを表している。

「そんな、一体どうやって?」

「俺に考えがある。上手くいくかはわからないが。ただし、成功した場合には美術部への入部は諦めろ。それを受け入れるっていうのなら試してみるが……どうする?」

「なんと! そんな方法あるんですか⁉ ぜひぜひお願いします! ほしのん一生のお願いです!」

 即答だった。