そんな事を考えている間にも、星乃は渡された白い林檎をじっくりと見つめる。
隣で見ていてもわかる。俺の作ったものとはまるきり違う。白いのにまるで本物の林檎みたいだ。齧ればそのシャリシャリとした食感と共に甘酸っぱい果汁が口に広がる……そんな想像までしてしまう。
と、その時、あろう事か、俺の腹部から蛙の鳴き声のような音が発せられた。星乃と蜂谷先生が同時にこちらを見る。
な、なんでこんな時に腹が鳴るんだ!
おそるおそる蜂谷先生の様子を伺うと、彼は顔を背けながら、咳払いでもするように口元に手を当てていた。
やばい、絶対聞こえてた! しかも笑われてる! 思えば中庭の銅像の件で穴を掘った時もそうだった。俺の腹の蛙は食欲に大変正直なのだ。
星乃の言葉を借りれば、きっと今の俺の顔色は#FFDAB9くらいに違いない。
「もう先輩、いくら蜂谷先生の林檎が本物みたいだからって、そんなはしたない音を鳴らして、身体は正直ですね。さあさあ満足するまでじっくりと拝見させていただくと良いですよ。あんなところやこんなところまで」
星乃から林檎を手渡されながら、俺は焦って先生に向き直る。
「ええと、今のは、先生の林檎があまりにも美味しそうだったので……」
「……それは、俺のせいなのか?」
「……俺の腹の蛙がそう言って鳴きました」
聞こえてしまったものは仕方がない。林檎を返しながら正直に答えると、蜂谷先生は自らの作った林檎を、しばらくの間まじまじと見つめた後で、改めて俺に向き直る。
「……それなら、この林檎を受け取ってくれないか?」
「え?」
「……どうせ習作なんだ。腹の蛙を鳴かせるほどのものなら、君に持っていてもらったほうが、俺もこの林檎も本望だ」
なんと、そんな事を言い出した。
「せ、先生のスーパーレジェンドレアアップルを先輩に……⁉」
信じられないと言った様子で星乃が呟く。皮肉にも俺の腹が鳴ったおかげで、こんな展開に発展するとは。
「……いらないのなら無理にとは言わな――」
「ぐーぐー」
隣で見ていてもわかる。俺の作ったものとはまるきり違う。白いのにまるで本物の林檎みたいだ。齧ればそのシャリシャリとした食感と共に甘酸っぱい果汁が口に広がる……そんな想像までしてしまう。
と、その時、あろう事か、俺の腹部から蛙の鳴き声のような音が発せられた。星乃と蜂谷先生が同時にこちらを見る。
な、なんでこんな時に腹が鳴るんだ!
おそるおそる蜂谷先生の様子を伺うと、彼は顔を背けながら、咳払いでもするように口元に手を当てていた。
やばい、絶対聞こえてた! しかも笑われてる! 思えば中庭の銅像の件で穴を掘った時もそうだった。俺の腹の蛙は食欲に大変正直なのだ。
星乃の言葉を借りれば、きっと今の俺の顔色は#FFDAB9くらいに違いない。
「もう先輩、いくら蜂谷先生の林檎が本物みたいだからって、そんなはしたない音を鳴らして、身体は正直ですね。さあさあ満足するまでじっくりと拝見させていただくと良いですよ。あんなところやこんなところまで」
星乃から林檎を手渡されながら、俺は焦って先生に向き直る。
「ええと、今のは、先生の林檎があまりにも美味しそうだったので……」
「……それは、俺のせいなのか?」
「……俺の腹の蛙がそう言って鳴きました」
聞こえてしまったものは仕方がない。林檎を返しながら正直に答えると、蜂谷先生は自らの作った林檎を、しばらくの間まじまじと見つめた後で、改めて俺に向き直る。
「……それなら、この林檎を受け取ってくれないか?」
「え?」
「……どうせ習作なんだ。腹の蛙を鳴かせるほどのものなら、君に持っていてもらったほうが、俺もこの林檎も本望だ」
なんと、そんな事を言い出した。
「せ、先生のスーパーレジェンドレアアップルを先輩に……⁉」
信じられないと言った様子で星乃が呟く。皮肉にも俺の腹が鳴ったおかげで、こんな展開に発展するとは。
「……いらないのなら無理にとは言わな――」
「ぐーぐー」