「けど、菜野花畑星乃。お前が入部したいってしつこくやって来た時はちょっと期待したんだけどな。大抵のやつは一度や二度入部を拒否されたらそこで諦めるもんだ。でもお前は違う。何度拒絶されても懲りずに毎日先生のとこに押しかけて……そんなお前を先生が受け入れるってなら、それは先生が立ち直りつつあるって証拠で、前みたいに戻ってくれるんじゃないかって……けど、先生は今になってもお前の入部を認めねえ。それっていまだに誰も受け入れる気が無いって事だ。お前らもなんとなくわかってるだろ? あの先生が人とのかかわりを極力避けてるって。そんな先生に余計なストレスを与えたくなくて、あたしもついお前らに冷たく当たっちまって……悪かったな」

 赤坂は案外と素直に謝罪の言葉を口にした。

 俺達に話してくれたのは、彼女なりの贖罪のつもりなんだろうか。絶対に入部できないとも知らずに、毎日のように先生の元を訪れていた星乃への。

 赤坂は先ほどまでの不遜な態度とは打って変わって気まずそうに目を逸らしながら頭をかく。     

「……あたしだって内心では心苦しいさ。先生に立ち直って欲しいとも思ってる。前みたいに部活動が出来たらどんなに良いかって。でも、あの人が新しい部員の入部を許可しないってのなら、あたしにはマジでどうにもできないんだよ。諦めてくれ。たぶん蜂谷先生は、このまま美術部が廃部になっても構わないと思ってるに違いねえ」

「そんな……」

 星乃が呆然としたように呟く。無理もない。蜂谷先生の絵を見るため、教えを乞うためにこの学校まで追いかけてきたのだから、赤坂の告白は衝撃だったろう。

 その時、空気を変えるように赤坂が顔を上げた。

「あ、でも、あの先生はまだ美術を完全に拒絶してるってわけじゃない……と思う。でなけりゃ美術部はとっくに廃部になってるだろうからな。今お前らが作ってるその林檎、出来上がったら見せに行ってこいよ。入部の件は別として、その程度だったらアドバイスくらいは貰えると思うぜ」