「でも、確か以前に、当時の部員だった男子生徒の肖像画を描いたって聞いたが……その時は支障なく描けたんじゃないのか? 確かタイトルは『小鳥遊――』」
美術準備室で見たあの肖像画。真っ黒に塗り潰された顔に衝撃を受けて、先生には直接聞けなかったが、雪夜の話では、蜂谷先生自身は塗り潰した事は否定したという。それなら先生はちゃんとした肖像画を描いた事になる。
「『小鳥遊涼平』か。そんな事まで把握してんのかよ。お前らは先生のストーカーか?」
ストーカーまがいなのは星乃だけだ。ていうかお前も似たようなものだろ。
「心外だな。俺達だって人づてに聞いたんだ。案外有名な話なんじゃないか? この学校の七不思議の一つにもなってるとか」
「ああ、そんなくだらない話もあるな。噂してるやつを片っ端からぶっ転がしてやりてえくらいだよ」
雪夜には、身の安全のためにも今後七不思議の噂は控えるように伝えておこう。
しかし、いまいち確信がなかったが、赤坂が迷いなく答えたところをみると、俺達が美術準備室で目にしたものは、やはりその男子生徒を描いた例の肖像画だったようだ。
赤坂は手元の林檎に目を落としながら続ける。
「確かにあの時先生は肖像画を描いた。最初は渋ってたけど、小鳥遊先輩がどうしてもって頼み続けて、最終的に先生が折れた形で。先生はちゃんと見えたままの小鳥遊先輩の姿を描いた。先輩はそりゃ喜んだよ。いや、先輩だけじゃない。あたしだって……今まで肖像画どころか絵を描く事さえ躊躇っていた先生が絵を描いたんだ。良い兆候なんじゃないか。これをきっかけに自信を取り戻して、肖像画じゃないにせよ、また絵を描くんじゃないかって期待した。けど、それから暫くして小鳥遊先輩が亡くなっちまって、顔の塗り潰された肖像画が返されてきた時、先生は余計心を閉ざしちまったみたいでさ……『呪いの肖像画』だなんて変な噂まで立てられて……って、喋りすぎたかな」
赤坂は自身の言動を反省するかのようにため息を漏らす。
美術準備室で見たあの肖像画。真っ黒に塗り潰された顔に衝撃を受けて、先生には直接聞けなかったが、雪夜の話では、蜂谷先生自身は塗り潰した事は否定したという。それなら先生はちゃんとした肖像画を描いた事になる。
「『小鳥遊涼平』か。そんな事まで把握してんのかよ。お前らは先生のストーカーか?」
ストーカーまがいなのは星乃だけだ。ていうかお前も似たようなものだろ。
「心外だな。俺達だって人づてに聞いたんだ。案外有名な話なんじゃないか? この学校の七不思議の一つにもなってるとか」
「ああ、そんなくだらない話もあるな。噂してるやつを片っ端からぶっ転がしてやりてえくらいだよ」
雪夜には、身の安全のためにも今後七不思議の噂は控えるように伝えておこう。
しかし、いまいち確信がなかったが、赤坂が迷いなく答えたところをみると、俺達が美術準備室で目にしたものは、やはりその男子生徒を描いた例の肖像画だったようだ。
赤坂は手元の林檎に目を落としながら続ける。
「確かにあの時先生は肖像画を描いた。最初は渋ってたけど、小鳥遊先輩がどうしてもって頼み続けて、最終的に先生が折れた形で。先生はちゃんと見えたままの小鳥遊先輩の姿を描いた。先輩はそりゃ喜んだよ。いや、先輩だけじゃない。あたしだって……今まで肖像画どころか絵を描く事さえ躊躇っていた先生が絵を描いたんだ。良い兆候なんじゃないか。これをきっかけに自信を取り戻して、肖像画じゃないにせよ、また絵を描くんじゃないかって期待した。けど、それから暫くして小鳥遊先輩が亡くなっちまって、顔の塗り潰された肖像画が返されてきた時、先生は余計心を閉ざしちまったみたいでさ……『呪いの肖像画』だなんて変な噂まで立てられて……って、喋りすぎたかな」
赤坂は自身の言動を反省するかのようにため息を漏らす。