その困惑が俺達の顔に現れていたのか、暫くの沈黙ののち、赤坂は目を伏せながらぽつりと話し出す。
「お前がそこまで先生の事を尊敬してて、美術部に入りたいって気持ちはわかる。あたしもそうだったからな。でも、今の美術部には入部を制限せざるを得ない理由があるんだ」
「理由……ですか?」
赤坂は少しためらいながら話し出す。「ここだけの話にして欲しいんだけど」と、幾分か小さな声で前置きして。
「お前らは知らないのかもしれねえけど、蜂谷先生はさ、何年か前に事故にあって利き腕を傷めたんだ。それで、思うように絵が描けなくなっちまったらしくて……」
「え?」
俺と星乃は思わず驚きの声を上げる。
「とはいえ生きるためには働かなけりゃならねえ。だからここで美術教師やってんだ。でも、画家が好きなように絵を描けないなんて惨めすぎるだろ。生徒に指導するのだって、きっと本心では辛いに違いねえ。だから今は美術部の入部希望者が来ても断ってんだ。わかってやってくれ。あたしはたまたまタイミングよく入部できただけ。入部届の出来なんてほんとは関係ねえんだよ」
まさか蜂谷先生にそんな事情があったとは……ここ数年作品を発表する事がなかったというのもそのせいなのか?
けれど、そのために星乃は無駄な入部届を何枚も書かされた。それって先生のエゴじゃないのか?
入部が無理なら適当な理由をこじつけてでも最初からきっぱり断ればいいものを、文字が気に入らないだとか言いながら今まで引き延ばしている。
星乃もショックだったのか、暗い顔をして俯いている。
しかし、そこで俺はある疑問を抱いた。
「お前がそこまで先生の事を尊敬してて、美術部に入りたいって気持ちはわかる。あたしもそうだったからな。でも、今の美術部には入部を制限せざるを得ない理由があるんだ」
「理由……ですか?」
赤坂は少しためらいながら話し出す。「ここだけの話にして欲しいんだけど」と、幾分か小さな声で前置きして。
「お前らは知らないのかもしれねえけど、蜂谷先生はさ、何年か前に事故にあって利き腕を傷めたんだ。それで、思うように絵が描けなくなっちまったらしくて……」
「え?」
俺と星乃は思わず驚きの声を上げる。
「とはいえ生きるためには働かなけりゃならねえ。だからここで美術教師やってんだ。でも、画家が好きなように絵を描けないなんて惨めすぎるだろ。生徒に指導するのだって、きっと本心では辛いに違いねえ。だから今は美術部の入部希望者が来ても断ってんだ。わかってやってくれ。あたしはたまたまタイミングよく入部できただけ。入部届の出来なんてほんとは関係ねえんだよ」
まさか蜂谷先生にそんな事情があったとは……ここ数年作品を発表する事がなかったというのもそのせいなのか?
けれど、そのために星乃は無駄な入部届を何枚も書かされた。それって先生のエゴじゃないのか?
入部が無理なら適当な理由をこじつけてでも最初からきっぱり断ればいいものを、文字が気に入らないだとか言いながら今まで引き延ばしている。
星乃もショックだったのか、暗い顔をして俯いている。
しかし、そこで俺はある疑問を抱いた。