「なるほどね。あの銅像の件のお礼ってわけか。才蔵も義理堅いね。ま、家族の名誉が掛かってたわけだし、当然といえば当然か」
かいつまんで事情を説明すると、雪夜は納得したように頷く。
正確には義理以外の感情も含まれているんだが……。
「そういえば雪夜、『たかなしりょうへい』って人物に心当たりはないか?」
食後に各自お茶などを飲みながら雪夜に尋ねる。先ほども触れた通り、こいつには好奇心旺盛なところがあり、ときどき驚くほど物事に詳しい。
さっきのピッガイヤットサイとか。もしかしたら美術準備室で見たあの絵についても何か知っているのでは、と思ったのだ。
雪夜は首を傾げる。
「それって……僕らの一学年上の先輩で、美術部員だった人だよ。部活でお世話になったから覚えてる。舞台の背景なんかを作る時に協力してもらってたんだ。残念ながら去年の秋頃に亡くなっちゃったけど。ほら、追悼集会も開かれたでしょ?」
「亡くなった……?」
思わぬ言葉に俺と星乃は顔を見合わせる。
そうか。俺があの絵のタイトルを見て、なんとなく心当たりがあったのはそのせいか。
「そう。生まれつき身体が弱かったとかで、僕らが入学してから何か月か後に病気で……」
俺の脳裏にも、あの追悼集会の記憶がおぼろげに蘇る。沈鬱そうな校長の声。俯く生徒達。
「そういえば僕、部活で聞いたんだけど、その先輩に関してちょっとした噂があってさ」
「噂?」
「その小鳥遊先輩なんだけど……亡くなる少し前だったかな。蜂谷先生から肖像画を描いて貰ったらしいんだ」
「えっ?」
俺と星乃は思わず声を上げる。