「うん? どういう意味だ?」
「ほら、先生は入部届を受け取らずに返してきたじゃないですか。今までもずっとそうだったんです。だから、入部届の日付の部分だけを書き換えて同じものを提出して、本当に私の文字だけが問題なのか確認しようと思って」
その言葉に密かに驚愕する。まさかそんな事をしていたとは……。
「それで、どうだったんだ?」
「前回は星乃の『乃』の字の払いが気に入らないって言われました。その前は『花』の草冠の位置が変だって。毎回指摘される部分が違うんです。同じものを提出しているはずなのに」
「それじゃあ、先生は入部届を全く見てないって事か?」
「そういう事になるんですかね。理由はわかりませんけど」
「それなら、赤坂が入部できた理由の『入部届が完璧だったから』っていうのは……」
「うーん……それがわからないんですよね。その頃と比べて入部条件が変わったとか……?」
「それだったら、先生だってわざわざ入部届にダメ出ししないだろ」
「そうなんですよ! もう、私の何がいけないっていうんだろ。先生のカバッ! コビトカバッ!」
星乃は急に憤慨する様子を見せると、パンケーキにずぶりとフォークを突き立てる。「馬鹿」と言わないのは一応の配慮なのか?
さっきまで平気なふうを装っているように見えたが、これは相当ストレスが溜まってるな。一度断られた俺でさえイラっとしたんだから、それが積み重なった星乃はその比じゃないのかもしれない。
「なあ星乃。いっその事、このままフリー美術部員でいつづけても構わないんじゃないか?」
「はい?」
「確か君は自分の居場所がなくなるのが嫌だって言ってたよな。だったら今は同じフリー美術部員の俺がいるじゃないか。昼飯だって、一人が嫌なら俺が一緒に食ってやる。それなら別に美術室じゃなくても、たとえ美術部が廃部になっても構わないだろ?」
自分で言いながらも恥ずかしい台詞のオンパレードだなと感じつつ、それもひとつの方法なのではと思っていた。
「ほ、ほんとですか⁉ ほんとにお昼もフリー部活動も一緒に⁉ それなら、それならぜひ……あ、でも、私……」
星乃は一瞬喜ぶようなそぶりを見せたが、歯切れ悪く黙り込む。それを見てなんだか不安になってきた。
俺は星乃に興味がある。星乃は友達が欲しい。それなら丁度いいじゃないか。だなんて単純に考えていたのだが、もしかして星乃は俺と友達になるのが嫌なのか……?
無言で返事を待っていると、星乃はそわそわしだした。
「ええと、あの、私、フリー美術部員じゃ満足できないんです。どうしても正規美術部員になりたくて」
予想とは違う答えが返ってきたのでそのまま耳を傾ける。
「実は私、蜂谷先生に一目惚れしちゃって……きゃー言っちゃったはずかしいー!」
「ほら、先生は入部届を受け取らずに返してきたじゃないですか。今までもずっとそうだったんです。だから、入部届の日付の部分だけを書き換えて同じものを提出して、本当に私の文字だけが問題なのか確認しようと思って」
その言葉に密かに驚愕する。まさかそんな事をしていたとは……。
「それで、どうだったんだ?」
「前回は星乃の『乃』の字の払いが気に入らないって言われました。その前は『花』の草冠の位置が変だって。毎回指摘される部分が違うんです。同じものを提出しているはずなのに」
「それじゃあ、先生は入部届を全く見てないって事か?」
「そういう事になるんですかね。理由はわかりませんけど」
「それなら、赤坂が入部できた理由の『入部届が完璧だったから』っていうのは……」
「うーん……それがわからないんですよね。その頃と比べて入部条件が変わったとか……?」
「それだったら、先生だってわざわざ入部届にダメ出ししないだろ」
「そうなんですよ! もう、私の何がいけないっていうんだろ。先生のカバッ! コビトカバッ!」
星乃は急に憤慨する様子を見せると、パンケーキにずぶりとフォークを突き立てる。「馬鹿」と言わないのは一応の配慮なのか?
さっきまで平気なふうを装っているように見えたが、これは相当ストレスが溜まってるな。一度断られた俺でさえイラっとしたんだから、それが積み重なった星乃はその比じゃないのかもしれない。
「なあ星乃。いっその事、このままフリー美術部員でいつづけても構わないんじゃないか?」
「はい?」
「確か君は自分の居場所がなくなるのが嫌だって言ってたよな。だったら今は同じフリー美術部員の俺がいるじゃないか。昼飯だって、一人が嫌なら俺が一緒に食ってやる。それなら別に美術室じゃなくても、たとえ美術部が廃部になっても構わないだろ?」
自分で言いながらも恥ずかしい台詞のオンパレードだなと感じつつ、それもひとつの方法なのではと思っていた。
「ほ、ほんとですか⁉ ほんとにお昼もフリー部活動も一緒に⁉ それなら、それならぜひ……あ、でも、私……」
星乃は一瞬喜ぶようなそぶりを見せたが、歯切れ悪く黙り込む。それを見てなんだか不安になってきた。
俺は星乃に興味がある。星乃は友達が欲しい。それなら丁度いいじゃないか。だなんて単純に考えていたのだが、もしかして星乃は俺と友達になるのが嫌なのか……?
無言で返事を待っていると、星乃はそわそわしだした。
「ええと、あの、私、フリー美術部員じゃ満足できないんです。どうしても正規美術部員になりたくて」
予想とは違う答えが返ってきたのでそのまま耳を傾ける。
「実は私、蜂谷先生に一目惚れしちゃって……きゃー言っちゃったはずかしいー!」