明るい照明の下では笑いさざめくお客達。そのほとんどが若い女性やペアの男女。近隣の学校の制服を着ているグループも何組か。

 壁紙はパステルピンクとオフホワイトのストライプ。椅子やテーブルなどの家具はアンティーク調で統一されている。

 駅ビルの中にあるこのカフェは、多様な種類のパンケーキが売りで、連日多くの人で賑わっている。

俺もつい昨日、入部前祝いと称して星乃に連れてこられたばかりだ。あの時はまさか美術部に入部できないとは思ってもみなかったが……。

 星乃は俺の目の前で「小倉クリームタワーパンケーキ抹茶アイス添え」なるものにナイフを入れる。ドリンクはグレープフルーツジュース。

「昨日も思ったが、よくもそんな激甘なものを大量に食べられるな。見ているだけで胸焼けしそうだ」

 俺だって甘いものはそれなりに好きだが、このありえない量のクリームたっぷりパンケーキを連日消費するのはさすがにつらい。今日は飲み物だけで充分だ。

「もう、わかってませんね。パンケーキを食べてからグレープフルーツジュースを飲むでしょ? そうするとパンケーキの甘さがグレープフルーツジュースのほろ苦さで中和されて、またパンケーキを食べたくなる。つまりこの二つが組み合わさると無限に食べていられるんですよ。これはいわば永久機関! 偉大なる発見ですよ! 先輩も試してみたらどうですか?」

「今日は遠慮しておく」

 信じられない量のホイップクリームから目をそらす。俺の前にはアイスティーのみ。

 それに反して、何枚も重なったパンケーキをもりもりと消費しながら、星乃は思い出したように口を開く。

「ねえへんはい」

「口の中のものを完全に飲み込んでから喋ってくれ」

 星乃はパンケーキを飲み下すと、改めて話しだす。

「ねえ先輩、どうして美術部は部員の入部を制限してるんでしょうか? 本当に入部届の文字の美しさだけが理由だと思います?」

「さあ、想像もつかない。それこそ蜂谷先生にしかわからないだろ」

 星乃がそんな事を言い出すなんて意外だった。今まで何回も入部届にダメ出しされて、それでも妄信的に入部届を提出し続けていたというこいつが、今さらそんな疑問を持つなんて。

「もしかして、入部するに値するか確かめるために、一見わからないようにテストされてたんでしょうか? 私達はそれに合格できなかったとか」

「テスト?」

「実は私、ここ五回くらいは、ずっと同じ入部届を先生に提出していたんです」