「それで、蓮上才蔵はともかく菜野花畑星乃。お前のほうはどうだったんだよ。今日は先生に入部届を受け取ってもらえたのか?」
赤坂はいきなり話を転換し、俺達の目下の問題の核心を突くような事を言ってきた。
「そ、それが……今日もダメでして……私の『星』の字が入部の基準を満たしてなかったみたいです」
赤坂はそれを聞くと、つかの間スマホを操作する手を止めて黙り込み、
「そっか……」
とだけ答えて、再び指を動かし始めた。
随分と冷めた態度だ。
そんな彼女に対して、俺は思わず声を上げていた。
「なあ赤坂さん、君の力でなんとか星乃だけでも入部させてもらう事はできないか? 蜂谷先生に口添えするとか」
「え?」
星乃が戸惑ったような声を上げるが、構わず俺は赤坂に訴える。
「部員の君が頼んでくれたら、先生も考えてくれるかもしれないだろ?」
「なんだよ蓮上才蔵。そんなに必死になるとか、お前もしかして菜野花畑星乃の事好きなわけ?」
こちらに目を向けながら唇をにやりと釣り上げる。
何を言い出すんだこいつは! 小学生みたいなからかい方をしやがって。しかもさっきから思ってたけど、なんでフルネームで呼ぶんだ!
「そうじゃない! 話をすり替えるな!」
「おー、怖えー。そんな必死になるとかますます怪しいなあ。まあ一応はそういう事にしといてやるけどさ。確かにさっきの絵の件に関しては菜野花畑星乃に感謝してる。でも、それとこれとは別だ。悪いな」
赤坂は気だるそうにテーブルから飛び降り、頭をもさもさとかきながら美術室から出て行ってしまった。
なんだあいつ。部活動しに来たんじゃないのか?