な、なんだ? 突然叫んだりして……。
その勢いに取り残された俺たちが注目していると、星乃は赤坂に顔を向ける。
「赤坂先輩。もしかして、絵に描かれてるこの褐色の肌の男の子は、アフリカ系アメリカ人――いわゆる『黒人』と呼ばれている人種なのでは?」
「あ? 言ってなかったか? そうだよ。甥の友人ってのは、仕事の関係で日本に住んでるアメリカ人一家の子どもなんだってよ」
「それです! まさに文化の違いですよ! どうしてそれを早く教えてくれなかったんですか! 私はてっきりこの子が日焼けしてるんだとばかり思ってましたよ!」
アフリカ系アメリカ人……? それじゃあ俺達が日焼けだと思い込んでいたのは、もともとの少年の肌の色だったのか? でも、だとしてもわけがわからない。
「どういう事だ? 星乃、この絵の少年がアフリカ系アメリカ人だと何か問題でも?」
俺の問いに星乃は説明するように絵を指し示す。
「スイカですよ、スイカ。ほら、この絵の中の男の子達はスイカを食べてますよね? でも、黒人とスイカっていう組み合わせは、差別的表現にあたるとされているんです。欧米では特に。この子の親御さんは、それが原因で怒りを覚えたのかもしれません」
「え……」
「そもそもは奴隷制の時代に、安価で手に入ったスイカを多くの黒人が口にした事から、黒人=スイカというイメージが定着したとも言われてて……彼らにとっては、スイカと黒人という組み合わせは、たぶん、その時代を思い起こさせるような、あまり良い意味を持たないものなんじゃないでしょうか?」
そういう事か。自分たちが侮辱されたと思えば、冷静さを失っても当然なのかもしれない。
話を聞き終えた赤坂は、何かを考え込むように顎に手を添える。
「なるほどな……友人の保護者は差別されたと勘違いしたのか。甥も子どもだとはいえ、相手国の文化を知らずにタブーを犯しちまったんだな……」
その声は少し沈み気味だ。ヤン天くれはも落ち込む事があるんだな。
そんな彼女を励ますように星乃は身を乗り出す。
「それなら、スイカの部分だけ白く塗り潰して、その上から別のものを描くというのはどうでしょう。たとえば、メロンとか。もちろん、相手の意向も伺ってからになるでしょうけど。でも、正直に話せばわかってくださるんじゃないでしょうか。だって、先輩の甥っ子さんは、差別だなんて思っていなかったからこそ、ただ事実を描いたんでしょう?」
「だろうな。あたしだって思いつきもしなかった。それが相手にも伝わるといいんだけど。とりあえず早いとこ甥の家族に連絡しておくか。つーか差別なんてくだらねえな。なんでそんなものが世の中にあるんだよ。うぜえ」
そう言うと赤坂はスマホを取り上げ弄りだした。その指の動きからしてメールでも打っているのだろう。
その勢いに取り残された俺たちが注目していると、星乃は赤坂に顔を向ける。
「赤坂先輩。もしかして、絵に描かれてるこの褐色の肌の男の子は、アフリカ系アメリカ人――いわゆる『黒人』と呼ばれている人種なのでは?」
「あ? 言ってなかったか? そうだよ。甥の友人ってのは、仕事の関係で日本に住んでるアメリカ人一家の子どもなんだってよ」
「それです! まさに文化の違いですよ! どうしてそれを早く教えてくれなかったんですか! 私はてっきりこの子が日焼けしてるんだとばかり思ってましたよ!」
アフリカ系アメリカ人……? それじゃあ俺達が日焼けだと思い込んでいたのは、もともとの少年の肌の色だったのか? でも、だとしてもわけがわからない。
「どういう事だ? 星乃、この絵の少年がアフリカ系アメリカ人だと何か問題でも?」
俺の問いに星乃は説明するように絵を指し示す。
「スイカですよ、スイカ。ほら、この絵の中の男の子達はスイカを食べてますよね? でも、黒人とスイカっていう組み合わせは、差別的表現にあたるとされているんです。欧米では特に。この子の親御さんは、それが原因で怒りを覚えたのかもしれません」
「え……」
「そもそもは奴隷制の時代に、安価で手に入ったスイカを多くの黒人が口にした事から、黒人=スイカというイメージが定着したとも言われてて……彼らにとっては、スイカと黒人という組み合わせは、たぶん、その時代を思い起こさせるような、あまり良い意味を持たないものなんじゃないでしょうか?」
そういう事か。自分たちが侮辱されたと思えば、冷静さを失っても当然なのかもしれない。
話を聞き終えた赤坂は、何かを考え込むように顎に手を添える。
「なるほどな……友人の保護者は差別されたと勘違いしたのか。甥も子どもだとはいえ、相手国の文化を知らずにタブーを犯しちまったんだな……」
その声は少し沈み気味だ。ヤン天くれはも落ち込む事があるんだな。
そんな彼女を励ますように星乃は身を乗り出す。
「それなら、スイカの部分だけ白く塗り潰して、その上から別のものを描くというのはどうでしょう。たとえば、メロンとか。もちろん、相手の意向も伺ってからになるでしょうけど。でも、正直に話せばわかってくださるんじゃないでしょうか。だって、先輩の甥っ子さんは、差別だなんて思っていなかったからこそ、ただ事実を描いたんでしょう?」
「だろうな。あたしだって思いつきもしなかった。それが相手にも伝わるといいんだけど。とりあえず早いとこ甥の家族に連絡しておくか。つーか差別なんてくだらねえな。なんでそんなものが世の中にあるんだよ。うぜえ」
そう言うと赤坂はスマホを取り上げ弄りだした。その指の動きからしてメールでも打っているのだろう。