芸術家というものは、えてしてどこか変わっている節がある。というのが俺の持論だ。
とはいえ顧問の教師を含め、こんな濃い面子ばかりが集まっているとは想像だにしなかった。
「……やっぱウザ乃はやめとく。さっきの言葉は取り消しだ」
さすがのヤン天くれはも、星乃の明後日ポジティブっぷりに引いてしまったようだ。
「ところで菜野花畑星乃。そっちの男は何だ? まさかお前の彼氏か? なんか地味でつまんなそうなヤツだな」
ヤン天くれはは早速俺に対しても暴言を吐く。ていうか、俺は他人から見てそんなイメージだったのか……? 地味でつまんなそうなのか……?
「……俺は蓮上才蔵だ。君と同じ二年のな」
少々のダメージを受けつつも名乗ると、赤坂は首をひねった。
「蓮上才蔵……聞いた事ねえな。どっかで会ったっけ?」
「赤坂先輩! このお方はほら、蓮上風紀委員長様ですよ! 風紀委員長の蓮上先輩ですよ! あの風紀委員長の蓮上、蓮上才蔵様ですよ!」
星乃が間に入ってくどい説明をする。しかしそうやって名前を連呼するのは選挙カーみたいなのでやめて欲しい。
「あー、たまに校門脇に立ってるヤツか。どうりで見た事ある顔だと思ったぜ。お前んとこの委員が、顔合わせるたびに『髪色変えろ』ってうっせえんだけど、なんとかしてくれよ」
そうだ。彼女と同じクラスにいる風紀委員の生徒が、赤坂のせいで「風紀が乱れる」とよく愚痴っている。
「残念ながら俺も同じ意見だ。その髪色には感心できない」
赤坂は小さく舌打ちする。
「使えねえな。あたしの髪色は地毛だっつーの」
嘘つけ。
「で、その風紀委員長様が何のご用で? まさか髪の事でわざわざここまで説教しにきたか? それともお前も美術部に入部する気じゃねえだろうな?」
「もちろん入部するつもりだが、なにか問題でも? それまではフリー美術部員として活動する予定だ」
星乃との約束だからな。
俺の答えに赤坂は「うげ」と声を上げて顔をしかめた。