「理不尽すぎる! なんなんだあの教師は! 文字が気に入らないとか、完全に言いがかりだろ! 書道家じゃあるまいし!」

 追い出された後で、我に返って憤る俺に対し、星乃は少し沈んでいるようだが、俺よりはるかに落ち着いている。

「だから言ったじゃないですか。顧問の先生は厳しいって。いつもの事なんですよ。文字が気に入らないって受け取ってくれないんです。今まではそれは建前で、本当は私がうざいのが原因だと思ってたんですけど……だったら他の人や先輩まで入部できないはずがないし……きっと先生は美意識が高いんですね」

「厳しいってそういう意味だったのか⁉ だいたいあいつは、俺が中庭の銅像の件について相談しに行ったときも非協力的だったし、単にやる気がないだけなんじゃないのか⁉」

「まあまあ、落ち着いてください。とりあえず今日はフリー美術部員としてフリー部活動でもしましょう。入部届はまた明日」

「また明日って……星乃は今まで一体何回ダメ出しされたんだ?」

「ええと、十七回目くらいまでは覚えてるんですけど……」

「嘘だろ⁉ それだけやっても入部できないのか⁉ それじゃあ俺は一体何回書き直せば良いっていうんだ⁉」

 どこが「安心・安全のダブルA」のお願いなんだ! それこそスーパーレジェンドレア級の難易度じゃないか! これがこの先毎日続くだなんて考えたら気が変になりそうだ! 

 おかしいと思ってた。たとえ星乃がうざいという理由だとしても、美術部というそこそこ人気のあるはずの部に、部員が一人だけだなんてあるわけがない。おそらくあの顧問の無理難題が原因なのだ。

 しかし星乃との約束を反故にするわけにもいかず、若干重い足取りで、フリー部活動とやらのために美術室へと戻る。

 するとそこにはひとつの小さな影が。
 テーブルの上に腰かけて足をぶらぶらと遊ばせている。
 隣にいた星乃が

「う、ウルトラレアキャラ……!」

 と呟くのが聞こえた。