「す、す、すみませんすみません……!」
星乃が謝罪しながら慌てて布を元に戻すと塑像台から離れる。
俺の胸にも、他人のテリトリーで好き勝手してしまったという罪悪感が沸き上がる。そのせいか、先ほど見た顔の真っ黒な絵について尋ねる事もできず、素早くその場から距離を取る。少々の気まずさと共に。
近くで目にする先生は、いつものように無気力とも言える表情で、光の加減によっては銀色にも見えるその特殊な髪色のせいか、こうして対峙しているだけでも威圧感を受けてしまう。
その時、隣にいた星乃が入部届をばっと勢い良く差し出した。
「蜂谷先生! 美術部への入部届を持ってきたので受け取ってください! 今日こそ完璧……なはず、です……!」
「あ、そうだ。俺も」
先ほどの人物画の衝撃で、危うく本来の目的を忘れるところだった。気まずいながらも入部届を取り出す。
あの不気味な絵については何故だか触れてはいけないような気がした。
二人分の入部届を手に取った先生は、暫くそれを見つめていたが
「……これは受け取れない」
と、二枚とも突き返してきた。
「え……?」
戸惑う俺をよそに、星乃は先生に迫る。
「またですか⁉ どこが駄目なんですか⁉ 教えてください! 教えて貰えるまで帰りませんよ! ここで寝泊まりしますよ!」
「……菜野花畑星乃。君の入部届の『星』の字。この『日』と『生』のバランスが気に入らない」
は? なんだその理由。
「なるほど。そこかあ……後で星の字の練習しなきゃ。私の心の手帖に追記です。かきかき」
納得したような星乃と、納得できない俺。到底信じられない拒否理由だ。
そんな俺にも蜂谷先生は
「……蓮上才蔵。君はこの『上』の文字の横棒の傾きが不自然だ」
などと告げてくる。
「……すまないが、二人とも入部は認められない」
それだけ言うと、蜂谷先生は用は済んだとばかりにドアを開けて退室を促した。
星乃が謝罪しながら慌てて布を元に戻すと塑像台から離れる。
俺の胸にも、他人のテリトリーで好き勝手してしまったという罪悪感が沸き上がる。そのせいか、先ほど見た顔の真っ黒な絵について尋ねる事もできず、素早くその場から距離を取る。少々の気まずさと共に。
近くで目にする先生は、いつものように無気力とも言える表情で、光の加減によっては銀色にも見えるその特殊な髪色のせいか、こうして対峙しているだけでも威圧感を受けてしまう。
その時、隣にいた星乃が入部届をばっと勢い良く差し出した。
「蜂谷先生! 美術部への入部届を持ってきたので受け取ってください! 今日こそ完璧……なはず、です……!」
「あ、そうだ。俺も」
先ほどの人物画の衝撃で、危うく本来の目的を忘れるところだった。気まずいながらも入部届を取り出す。
あの不気味な絵については何故だか触れてはいけないような気がした。
二人分の入部届を手に取った先生は、暫くそれを見つめていたが
「……これは受け取れない」
と、二枚とも突き返してきた。
「え……?」
戸惑う俺をよそに、星乃は先生に迫る。
「またですか⁉ どこが駄目なんですか⁉ 教えてください! 教えて貰えるまで帰りませんよ! ここで寝泊まりしますよ!」
「……菜野花畑星乃。君の入部届の『星』の字。この『日』と『生』のバランスが気に入らない」
は? なんだその理由。
「なるほど。そこかあ……後で星の字の練習しなきゃ。私の心の手帖に追記です。かきかき」
納得したような星乃と、納得できない俺。到底信じられない拒否理由だ。
そんな俺にも蜂谷先生は
「……蓮上才蔵。君はこの『上』の文字の横棒の傾きが不自然だ」
などと告げてくる。
「……すまないが、二人とも入部は認められない」
それだけ言うと、蜂谷先生は用は済んだとばかりにドアを開けて退室を促した。