そして朝礼が始まった。校歌の斉唱。校長の挨拶。表面上はいつもと同じように滞りなく進行してゆく。
最後に各種連絡が済んだ後で、ステージ脇のマイクの前にいた進行役の教師が、改まったように口を開く。
「えー、一部の者は既に知っているかと思うが、現在中庭に深い穴が出現している。危ないのでいたずらに近づいたりしないように。なお、それについて穴を堀った当事者より説明がある」
その言葉を受けて、星乃はぎこちなく前に出てゆく。ステージに続く階段を上り切ると、中央に据えられた演台に立った。
マイクの前に立ちながら、星乃は緊張したように胸の前で指を組んだり解いたりを繰り返す。その姿を見て、生徒達が微かにざわめいた。
少々の居心地の悪さを表情に表しながらも、星乃は思い切ったように声を張り上げる。
「みなさん、このたびはお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。中庭の穴は、私が塹壕花壇という作品を制作するために、無許可で掘ってしまったんです。あの、塹壕花壇っていうのは、塹壕に見立てた深い穴の中に花壇を作るっていう芸術作品で……ええと、それはともかく、もしかしたら誰かが誤って穴に落ちてしまう危険だってあったのに、そんな軽率な事をしてしまい、本当にすみませんでした!」
星乃はぺこりと頭を下げる。
「でも、制作中にわかった事があるんです。それをどうしてもみなさんにお伝えしたくて」