顔を向けると、ジャージに身を包んだ体格のいい中年の男がこちらを覗き込んでいた。
 確か陸上部の顧問である体育教師だ。日曜まで出勤とは恐れ入る。

「なんだこりゃ。まったく、勝手にこんなもん作りやがって。よくもこんなに深い穴を掘ったもんだな。おい蓮上、お前確か風紀委員長だろ。なんて事してくれてんだよ」

 教師は俺たちの顔をじろりとねめつけながらも、なかば呆れているようだ。
 俺は慌てて立ち上がると弁明する。

「いえ、これは美術部の作品制作の一環でして。顧問の先生にも許可を貰って――」

 言いかけた俺のシャツの袖を星乃が掴んで引っ張る。なんだ?
 振り返ると、星乃は何故か言いづらそうに小声で告げる。

「……すみません。実は、許可を取ったっていうのは嘘なんです……こんな計画、話せば絶対反対されると思って……」