「この像の事だって、星乃は本来なら無関係なのに土まみれになって行動してくれて……俺の曖昧な話にも真剣になってくれて。君がいなければこの像に関する真実はわからないままだった。それが明らかになった事に感謝してる。これは俺の本心だ。本当にありがとう」

「……先輩はいい人ですね。あ、でも、もしかすると鈍い人なのかも。私の事そんなふうに言ってくれるくらいだもん」

「失礼な奴だな」

「ごめんなさい。でも、きっと先輩は友達多いんだろうなあ。いい人だもんなあ。いいなあ。私も友達欲しいなあ……」

 膝を抱きながら、心底羨ましそうに星乃は呟く。

 星乃だっていい奴なのにな。他人の為にこんなに一生懸命になってくれて。まわりのやつらは見る目が無い。

「先輩も子供時代はこの像みたいにかわいかったのかなあ。ねえ先輩。今度先輩の子供の頃の写真を見せてくださいよ。今と全然ちがったりして」

「今だって十分かわいいだろ。『ラブリー才蔵』って呼んでいいぞ」

「なんですかそれ。おかしい」

 俺のつまらない冗談に、星乃は笑った。
 その笑顔がなんとなく儚く、貴重なものに見えた。

 少年像の謎は解けた。星乃のおかげで。けれど、これで俺と彼女の接点はなくなってしまうんだろうか。この時間が過ぎれば、また俺達は以前のように……。

 そこまで考えて、俺は知らずと口を開いていた。こんなこと言葉にするべきかどうかもわからないが。

「なあ星乃」

「はい?」

「君にも選ぶ権利はあると思うけど……でも、もしも、君が嫌じゃなければ、俺と――」

「おい、お前ら、そこで何やってんだ!」

 唐突に野太い男の声が響いた。