星乃のせい? どういう事だ? 俺はわけもわからず、地面に視線を落とした彼女の顔を見つめる。

「私、昔から人との距離の取り方が下手みたいで……みんなと仲良くなりたいと思って、色々話しかけたりするんですけど、その度に言われるんです。『うざい』って。それで、みんな離れて行って、最終的にはいつもひとりぼっちで……」

「それだけで? まさか」

「いえ、決定的だったのは中学生の時。その時も私はしつこくしてる自覚が薄くて、距離を取ろうとした子に対して纏わり付いちゃったんです。その頃には私は既にぼっちぎみで、無意識に焦ってたところもあったのかも。それで、振り切ろうとしたその子に突き飛ばされちゃって……」

「……それで?」

「私は派手に窓にぶつかってガラスが割れて……幸いにも怪我はなかったんですけど、それが原因で私は完全に孤立してしまったんです」

「なんでだ? 悪いのは突き飛ばしたやつじゃないか」

「それが……突き飛ばされるほど私がその子を追い込んだって事で、相手は被害者。私はストーカー扱いされちゃって……」

 理解できない。周りのやつらは頭がおかしいのか?

「でも、それって中学時代の話なんだろ?」

「そうなんですけど……同じ中学からこの高校に進学した子達から噂が広まっちゃったみたいで……私に関わると何されるかわからないって。ストーカーだからって。それでここでも周りから浮いちゃって」

「そんなの、実際に星乃と接してれば、くだらない噂だってわかるはずだろ」

「女子の情報伝達力と結束力はすごいんですよ。もう怖いくらい。声を掛けようとしただけで逃げられちゃって。それに男子だって、そんなふうに女子から避けられてる人間に関わろうなんて思いませんよね。だから、まともに私の相手をしてくれる人なんていなくて……それで私、他のクラスや学年の人となら仲良くなれるかもって思って美術部に入部しようとしたんです。元々そのつもりだったし。でも、実際には美術部は最初からあの有様で……」

「最初から……?」

 星乃一人だけだったっていうのか? あの美術部は。

「ええ、時々来る入部希望者にも期待したんですけど、私の噂を知ってるのか、入部する事なく帰っちゃったりして……結果、美術部は今も部員が一人のまま。でも、それでも私は美術室に居座りました。だって、そこも追い出されたら、今度こそどこにも私の居場所がなくなっちゃう……」