「星乃がこの像の真相に気付いてくれなければ、祖父は不恰好な像を作った作者として不名誉な評価を受けるかもしれなかった。それを回避できるのも、君がこの穴を作ってくれたおかげだ」

「本当は、立ったまま像を見られるくらい深い穴を掘りたかったんですけどね」

 星乃は照れたように頭をかいた。軍手に着いた土が髪に触れて、ぽろぽろと彼女の肩にこぼれた。俺は反射的にそれを払おうとして手を伸ばしかけたが、それが馴れ馴れしい行為だと気づいて慌てて手を引っ込める。

 何を考えているんだ俺は。俺と彼女はそんな気安い関係じゃないはずだ。
 自重するように深く息を吐く。

「それにしても、君の発想力には驚かされたよ。きっと君の作る作品も斬新で面白いんだろうな。こんな素晴らしい部員のいる美術部が、廃部の危機に瀕しているなんて実に惜しい」

 素直な心情を述べた俺の言葉に、星乃の表情が沈んだように見えた。
 まずい事を言ってしまったかもしれない。美術部の存続に関しては彼女のほうが気にしているはずなんだろうから。

 だが、その後ではおずおずと話し出した彼女の言葉は、俺の予想に反するものだった。

「蓮上先輩。先輩は、どうして美術部に部員が一人しかいないか知ってますか?」

「さあ? この学校には美術に興味のあるやつが一人しかいないんじゃないのか?」

「違うんです。私のせいなんです」