俺達は教室の隅に集まっていた。というより、ショートカットとボブヘアーの女子を逃がさないように、俺と先生で二人を教室の隅に追い込んだのだが。

 星乃は例の林檎を手に取るとじっくり周りを眺めまわす。先ほど床に落ちた衝撃で、少し形が歪んでしまったが、特に何の変哲も無いように見える。

「だからあ、アタシらは何もしてないって言ってるじゃないすか。菜野花畑さんが勝手に変な事言ってるだけで」

 ショートカット女子は不服そうに申し立てるが、集中している星乃には聞こえていないようで、林檎をあらゆる角度から観察している。

「この林檎、中に何か入っていますね」

 星乃が林檎を振ると、微かにだが確かにカサカサと音がする。

「俺は何か入れた覚えはないぞ」

 申告すると、星乃は頷いた。

「おそらく、この二人が入れたんでしょう」

「なんでそんな事……しかも俺の林檎だけ」

「それは、先輩の林檎が『貯金箱』だったからです。そこの二人が硬貨投入口から何かを入れて、別の人物が壊して中のものを取り出す。そうやってこの中身を受け渡していたんです。もし受け渡し損ねても、テラコッタだから焼いてしまえば中身も燃えて、証拠を隠蔽できますからね」

「その中身って言うのは?」

「それは……実際に中を見てみないと……」

 星乃がちらりと俺に目を向ける。その手にはいつのまにかワイヤーが。そういう事か。

「……わかった。ひと思いにやってくれ」

「ごめんなさい、先輩……!」

 星乃は謝ると、問題の林檎をワイヤーで真っ二つに割る。

 そして、そこから出てきたものは――