お願いしますと言われてもな……とりあえず目の前の女子二人を撮っていればいいのか?

 撮影に集中していると、ショートカット女子が喋りだした。

「せ、先輩。アイツ……菜野花畑の本性知ってるんすか? 超ウザくて、おまけにストーカーで、超嘘つきなんっすよ。だからクラスでもぼっちで……」

「でたらめ言うな。確かにあいつはうざいけど、変な噂を流して孤立させたのは君だろ? それにあいつは嘘つきなんかじゃない。俺の恩人だ」

「おんじん~? アイツが? 何かの間違いじゃないっすか?」

「少なくとも君よりは信頼してる。俺は実直バカだからな」

 次の瞬間、ショートカット女子は舌打ちすると、俺の林檎を掴んでドアへと走り出した。

 しまった!

 咄嗟に追いかけようとしたものの、制服の裾をボブヘアーの女子に引っ張られ、出遅れてしまう。

 ますい。逃げられる!

 そう思った直後。美術室のドアが開き、入ってきた星乃とショートヘアー女子は、お互い勢いよくぶつかった。

「がっ!」

「ぎゃあ!」

 二つの悲鳴が上がり、その拍子に林檎がショートカット女子の手を離れ、廊下に転がり出る。そしてそれを拾った人物は――

「蜂谷先生……!」

「……この騒ぎは一体……」

 手の中の林檎と俺達を見比べながら、先生は呟いた。