翌日の昼休み。いつもと同じように雪夜を伴って美術室へ赴くも、そこに星乃の姿はなかった。
 もしかすると、いつも通りここにいるのではと思い訪れたのだが……。

「あれ? ほしのんいないね。今日はお休みなのかな?」

 不思議がる雪夜。
 俺は昨日の星乃の言葉を思い返していた。
 ――うざい私はいなくなるので。

「なあ雪夜」

「なに?」

「星乃って、その……うざいと思うか?」

「どうしたの急に」

「いいから答えてくれ」

「うーん、まあ、どちらかといえば、ね。あの独特のテンションとか。それについていけない人にはうざく感じるかも」

 そうだよな。本人もそれを一番気にしているし。
 俺はあの時、粘土を加工するかどうかに気を取られて、素であんな事を言ってしまった。今まであの言葉を口にしないよう気をつけていたつもりなのに。

「才蔵、もしかしてほしのんと何かあったの?」

 雪夜が顔を覗き込んでくる。心なしか心配そうに。
 真相を話すべきか否か。現状俺一人では解決できる気がしない。ここは思い切って打ち明けてみるべきか……?

「……実は……」

 少し考えた後に、俺は昨日の一連の出来事を話す。

「あー……それはやっちゃったね」

 雪夜は大げさに肩をすくめる。

「……やっぱりそう思うか?」

「そりゃそうだよ。特に、普段は『うざくない』とか言ってたくせに、結局は『うざい』なんて掌返したら、たとえ事実とはいえ、才蔵の言葉に縋り付いていたからこそ、ほしのんは余計傷ついちゃったんじゃないの?」

「どうすればいいと思う?」

「それは自分で考えなよ。まあ、僕なら土下座一択かな。それで信頼を回復できるなら。でも、これは僕の場合であって、ほしのんはちょっと特殊そうだしなあ……」

 確かに星乃は拗らせてる。土下座で効果があるかどうか。しかし、謝らなければ元も子もない。とにかくあいつを探し出すしかない。

「悪い。ちょっと用事ができた。昼飯は一緒に食えない」

「そう。がんばってね」

 まるで俺の思考を読んだかのように送り出してくれた雪夜を背に、俺は美術室から飛び出した。