「別に汚れたらまずいってわけじゃないが……」

「わ、ほんとですか? それならよかった。今日のよかった探し終了!」

 ポリアンナみたいな事を言いながら、何かを渡してきた。見れば軍手が一組。

「それ、蓮上先輩の分です。使ってください」

「使うって、何の為に?」

「聞いて驚かないでくださいよ。なんと今からここに花壇を作ります! わーわーひゅーひゅー!」

 星乃は自分の発言を盛り上げるかのように手を叩いてはしゃぐ。騒がしいやつだな……。

「花壇……?」

 謎の盛り上がりを無視して疑問の声を上げる俺に対し、星乃は例の少年像を指し示す。

「この少年像を見て、私の創作意欲がビビっと刺激されまして。この場所に花壇を作ったら素敵かなーと思ったんです。これでも芸術家のはしくれとしての血が騒いだとでもいいますか。それで、先輩にはその花壇作りを手伝っていただこうと思って! どうですか? いい考えでしょ? でしょ?」

「ちょっと待ってくれ。なんで美術部員でもない俺がそんな事を? 君一人じゃ作れないのか?」

「私もそうしたいのはやまやまなんですが、生憎と膝に矢を受けてしまいまして……」

「それなら潔く諦めたらどうだ?」

「そんな事言わずに……! 駄目ですか? こんなにもかよわい女子高生がお願いしても駄目ですか?」

 星乃が上目遣いにこちらを見上げる。あざとい。しかし俺だって、休日に呼び出された挙句、突然こんなわけのわからない作業を押し付けられそうになるなんて到底納得できない。自分で「かよわい」とか言い出す輩相手ならなおさら。

「いや、駄目っていうか、必要性を見出せないというか……」

「パンツ!」