日曜日。約束の時間に、俺は中庭に向かっていた。
 断るにしろ事情を尋ねるにしろ、俺は星乃の連絡先を知らないのだ。

それに、もしかして彼女が例の少年像に関して何か気付いたのでは? という思いもあり、日曜日という貴重な休日にもかかわらず、こうして学校を訪れている。
 本日は晴天。ピクニックなんかにはうってつけの日和だ。
 グラウンドからは練習に励む陸上部の声がする。相変わらず熱心だな。
 中庭に足を運ぶと、そこにはひとりの少女の後姿。ほっそりとした体躯に見覚えのあるミルクティー色の髪。星乃その人だ。
 手近な木の枝で、像の前の地面に何か描いているようだ。近づいてみると、長方形になるよう土に溝ができている。
 その大きさはおよそ畳一畳分ほど。周囲には他にもシャベルやら台車なんかが置かれているが……何に使うんだ?

「……おはよう」

 とりあえず声をかけると星乃が顔を上げた。

「わあ、おはようボンジュールです蓮上先輩! ほんとに来てくれたんですね。嬉しい! 嬉し死にしそうです!」

 星乃は大きな目を輝かせると、感激したように胸の前で両手を組み合わせる。そんなに喜ぶような事か?

「それで、ここに呼び出したりなんかして、一体なんの用事なんだ?」

「それは……あ、そうだ。私ってば重大な事を忘れてました。汚れても大丈夫な格好で来てくださいって伝えようと思ってたのに……!」

 確かに今日の星乃は全身を覆う水色のツナギを身につけ、足には安全靴のようないかついブーツまで装備して、いかにもこれから汚れ作業しますという格好をしている。

 長い髪も今は首のあたりで結んでおさげにして、背中に垂らしていた。

 対する俺は長袖のシャツにインナーにチノパン。靴だって何の変哲もないスニーカー。