俺は静かに深呼吸を一つして続ける。
「……彼が不注意で顔の部分を汚してしまって、それを隠すために自分で真っ黒に塗り潰したんだ。肖像画を他人に見せなかったり、クローゼットの奥に隠したりしたのは、その失敗を誰かにみつかって咎められたくなかったから。特に先生には知られたくなかった。せっかく描いて貰った肖像画を汚したなんてバレたら、信頼を損ねるかもしれないからな」
「え?」
星乃が大きな声を上げそうになり、咄嗟に自身の口を手で押さえる。
薄闇の中でも彼女と目が合ったのがわかった。俺は視線で訴えながらも雪夜に説明する。
「大切にしていた肖像画を好んで台無しにするはずがないし、そんなに気に入らなければ絵自体を処分すればいいだけ。それをしなかったのは、汚れても自分の手元に残しておきたかったからだ。そう考えればすべて納得がいく。それが俺達が先生と一緒に出した結論だ。そうだろう? 星乃」
俺が言わんとしている事を理解したのか、星乃は慌てて首を縦に何度も振る。
「そ、そうです。蓮上先輩の言う通り、その小鳥遊先輩が汚しちゃったとしか考えられなくて。だから全然『呪いの肖像画』とかじゃなかったんですよ」
俺も追い打ちとばかりに続ける。
「そういうわけだから、雪夜、お前も考えを改めて、部活の奴らにもそう伝えた方がいい。『呪いの肖像画』だなんておかしな噂が一人歩きして、蜂谷先生が変な目で見られるようになったらいい迷惑だ」
俺達の話を聞き終わった雪夜は、顎に手を添え何事か考えていたようだったが
「そっかあ。そんな単純な理由だったんだ。僕はてっきり何か深い意味があると思ってたけど……確かにそう考えると納得できるね。わかった、部活でもみんなに話してみる。ほしのんの憧れの君が、その絵の事で気味悪がられて、みんなに避けられたりなんかしたらかわいそうだもんね」
「ほんとですか⁉ ありがとうございます、望月先輩!」
星乃は頭を下げる。どうにか誤魔化せたようだ。これで七不思議の件も撤回できるかもしれない。
けれど、すぐに先生が教師をやめてしまうかも。という事を思い出し、引っ込みかけた憂鬱な気持ちが蘇ってきた。
「……彼が不注意で顔の部分を汚してしまって、それを隠すために自分で真っ黒に塗り潰したんだ。肖像画を他人に見せなかったり、クローゼットの奥に隠したりしたのは、その失敗を誰かにみつかって咎められたくなかったから。特に先生には知られたくなかった。せっかく描いて貰った肖像画を汚したなんてバレたら、信頼を損ねるかもしれないからな」
「え?」
星乃が大きな声を上げそうになり、咄嗟に自身の口を手で押さえる。
薄闇の中でも彼女と目が合ったのがわかった。俺は視線で訴えながらも雪夜に説明する。
「大切にしていた肖像画を好んで台無しにするはずがないし、そんなに気に入らなければ絵自体を処分すればいいだけ。それをしなかったのは、汚れても自分の手元に残しておきたかったからだ。そう考えればすべて納得がいく。それが俺達が先生と一緒に出した結論だ。そうだろう? 星乃」
俺が言わんとしている事を理解したのか、星乃は慌てて首を縦に何度も振る。
「そ、そうです。蓮上先輩の言う通り、その小鳥遊先輩が汚しちゃったとしか考えられなくて。だから全然『呪いの肖像画』とかじゃなかったんですよ」
俺も追い打ちとばかりに続ける。
「そういうわけだから、雪夜、お前も考えを改めて、部活の奴らにもそう伝えた方がいい。『呪いの肖像画』だなんておかしな噂が一人歩きして、蜂谷先生が変な目で見られるようになったらいい迷惑だ」
俺達の話を聞き終わった雪夜は、顎に手を添え何事か考えていたようだったが
「そっかあ。そんな単純な理由だったんだ。僕はてっきり何か深い意味があると思ってたけど……確かにそう考えると納得できるね。わかった、部活でもみんなに話してみる。ほしのんの憧れの君が、その絵の事で気味悪がられて、みんなに避けられたりなんかしたらかわいそうだもんね」
「ほんとですか⁉ ありがとうございます、望月先輩!」
星乃は頭を下げる。どうにか誤魔化せたようだ。これで七不思議の件も撤回できるかもしれない。
けれど、すぐに先生が教師をやめてしまうかも。という事を思い出し、引っ込みかけた憂鬱な気持ちが蘇ってきた。