結局、俺は母さんが用意してくれた朝食を半ば強制的に摂ることになってしまった。
ただ、その朝食を食べている間も、やはりここが過去なのだと思い知らされることがあった。
それは、テレビのニュースで、東京オリンピックについてキャスターの人が話していたからだ。
そのニュースというのは、国立競技場の改修がオリンピックの開催時期までに間に合うかとか、他にも多くの競技会場を使うことによって、その期間の国内イベントなどに影響が出ないのか、などといった議論がコメンテーターたちの間で飛び交っていた。
「もう、まだまだ先だっていうのに、色々問題があるのねぇ。せっかく日本でやるんだから、オリンピックは無事に開催できるといいんだけど……」
母さんは、半分くらいは他人事のように、そう呟いていた。
だが、俺は知っている。
俺がいた2020年には、東京オリンピックは無事に開催される。
マラソンのコースが直前で東京から札幌に変更したり、小さなトラブルはあったものの、テレビやネットニュースは軒並みメダルを獲得した日本人選手や、その日に行われた競技の結果などを連日報道されていた。
俺はあまり興味がなかったけれど、日本がオリンピック一色になった夏だった。