仲間を二人失った。いまもまだあの洞穴に横たわっているであろう二人のことを思い出す。死んでほしかったわけじゃないし、自分が死にたかったわけでもない。浅はかだったといえばそれまでだが、その根底にはきちんと理由があった。自分なりに、自分なりの正義という大義名分も。

「シン」

「ってえ、暗い暗い! こんなんもう千年も前の」

「ここを出よう」

「…………無理だよ」

「無理じゃない。出よう。こんな狭い場所にいつまでもいていいわけがないだろう」

「無理だよ」

「叶いっこないだろうというのはこの世界にはいくらでもある。避けられないことも、今乗り越えられないことも、一人では太刀打ちできないことも山のようにある」

「だったら、なおさら」

「だからお前の手は俺が引く。お前は後ろから俺を蹴り飛ばせ。そうしてここから出ていこう。もうお前は、この雪に用などないはずだ」

 シンの言っていることが正しいのであれば、この場所は「閉じている」から問題なだけだ。開けてしまえばこの雪も世界の一部とやらに戻るはず。そうすればシンは自由になれるし、きっとなぜ罪の子と呼ばれているのかも本当の理由がわかるはずだ。

 山頂に感じる嫌な気配。この結界の要は間違いなくそこにある。シンの父親が何をしていたかを突き止めることができればきっとこの結界の本当の使い方もわかるはず。とはいえ、もう検討はだいぶ着いていた。

「この囲いは、たぶんお前を閉じ込めているわけじゃない」

「え?」

「ただ、今はまだ断定できない。材料がないからな。だから一つだけ聞く。お前は外を、見たくないのか」

 出たいかどうか、出てどうするか。そんなのは生きていれば勝手にうしろをついてくるものだ。理由のために生きるわけじゃなく、理由を探してみてもその答えが出るでもなく。それは人類種も魔法使いも、きっと変わらない。

 時間が流れたら、シンはその命を削るかもしれない。寿命が短いといっていたけれど、十八まで生きていたことがもう奇跡なのかもしれない。それでも、友達がたった一つだけなにかを望むならばそれは

「……俺はもう、外に出てもいいと思う?」

「ああ。石が飛んで来たら俺が弾いてやる。実は少し前から銃弾を斬れるようになった」

「外で、生きていけると思う?」

「もちろんだ。というかそうでないと困るな、俺の冒険者稼業を手伝ってもらおうと思っているから」

「ふ、ははっ……馬鹿だなあ」

 笑って怒って泣いて叫んで、時にはどん底まで落ちて、また這い上がって、そうする方法も知らないシンなんてまだ子供も同然だ。だったらそれこそ外に出なくてはならない。外で学ぶことなんてたくさんある。言葉も、文化も、悲しみも、優しさも。

「出よう、ここから」

「ああ、出よう」

 そのためにはまず、あの山頂の「なにか」を突き止めなくては。