ちびっ子ふたりと私はお風呂に入らされた。
10人ぐらい入れそうな大きな浴槽。
私がスズリちゃんから手を離すと、
重力障害のせいでお風呂の湯が
身体にまとわりつく。
ひとりでは入れないと改めて実感する。
スミちゃんは息を止めて、
お風呂のお湯を身体に這わせると
全身を素早く、ただし雑に洗った。
結局3人で手を繋ぎ、交互に洗いあった。
料理で汚してしまったスウェットは、
黒色からピンク色に様変わり。
似合わなすぎて恥ずかしいが、
ちびっ子ふたりはとてもはしゃいでいる。
寝室では自分たちの能力を見せつけようと、
スズリちゃんは天井に張り付き、
スミちゃんは敷布団で簀巻きになって
私にひっつくように体当たりする。
私はふたりをなだめようとしたけど、
宿泊客の身なので強く言うこともできない。
先生役のレオさんがいないとこうなるんだね…。
当の先生は食器を洗って入浴の最中。
「お、着替えたの。
その色! ピンクか…似合う似合う。ぶふっ!」
「笑わないで。」
寝室に入ってきたミカが、
ちびっ子ふたりを捕まえて器用に寝かしつける。
〈リポーシェン〉のスズリちゃんには
掛け布団をベルトで床に固定し、
〈ヘビィ〉のスミちゃんには、
布団で窒息しないように敷布団と固定する。
オートマトンも部屋の隅に鎮座していた。
もしものときに対応するのだろう。
「ふたりとも寝るよー。」
「今日はなんの本?」
紙袋を持ってきたミカが、
いくつかの本を取り出す。
子供向けの絵本や図鑑の類ではない。
10歳ならもうそんな本読まないかもしれない。
けれどもミカが持ってきた本は、
『人体の構造』や『機械人形の機能』、
『月面からの火星開発』などの専門書ばかり。
大人向けの本で、
まず10歳が読むような本じゃない。
「いつもこんなの読んでるの?」
「あたしがいるときは、
だいたいこんなんだよ。」
「ふたりとも読めるの?」
「もう読めるよ。」
「お父さんとお母さん、宇宙にいるんだよ。」
まさかと思い、ミカの顔を見た。
「ふたりの両親はあたしの知り合いで、
いまは火星で地質学の研究してるの。」
予想と違っていてホッと胸をなでおろす。
その時、一冊の本が私の目に留まる。
真っ暗な宇宙に漂う、巨大な環状構造物。
宇宙居住区『スターリング』が表紙の本。
今どき紙の本などどうかと思ったが、
手にしたときの重さが不思議と懐かしい。
「…これ、私の本だ。」
正確には私が担当した本。
入社してまもなく、研修を終えて
社内制作で任された最初の案件。
表紙を開くと、懐かしい言葉がある。
『明日は、未来へ。』
いくつか、文言の候補を挙げたが、
最後の最後まで悩んだ箇所だ。
この本を担当するにあたって、
勉強のため、関連書物を熱心に読んだ。
上梓後、ショウさんに褒められたのを
今でもよく思い出す。
「再来年、そこに移住すんの。」
「ウソっ?」
「ウソじゃないよ。スズスミも一緒に。」
「そうだよ。」
「お父さんたちに会いに行くんだ。」
「あたしの研究に協力してくれてる
ふたりは優秀な助手たち。
今はみんなでお金貯めてるのさ。」
「そしたら火星行くんだよ。」
「行くー。」
「えーいいなー。楽しみだね。」
「マコトちゃんも来る?」
あまりのことに目を見開いて、ミカを見た。
変に期待を抱くちびっ子ふたりの視線が怖い。
「〈ヘビィ〉だし。
研究には都合が良さそう。」
「もしかして、人体実験でもするの?」
「まさか。人聞きの悪い。
そんなのしないわ。
それに地球の重力圏から外れると、
やっかいな重力障害もなくなるし。」
「へぇ…そうなの?」
ミカは首をかしげる。
「あれ、言わなかった?」
「言ってないし。聞いてない。」
「えーだって、
重力障害は地球の重力に関係するもの。」
「なんで私、宇宙?」
私は手元の本に目を落とす。
「マコちゃんも来るの?」
「あのね! スミも〈ヘビィ〉だよ!」
「スズは〈リポーシェン〉だよ。」
「知ってる知ってる。
マコトちゃんが一緒に来るかは
マコトちゃん次第だけど、誘ったのは
同郷のよしみってやつね。考えといて。
じゃあ今日は、この本読もっか。
マコトちゃんが読んでくれるから。」
「勝手すぎ。」
ちびっ子ふたりから眼差しが痛い。
観念して3人で横になって私は本を読んだ。
6年も昔に作った本だ。
この本を作っていたときは、
いつか自分も宇宙へ行くんだと思ってた。
『明日は、未来へ。』
懐かしさに1ページずつ読み上げると、
ふたりから高度な質問攻めに合った。
たどたどしい説明の度に、
横で聴いているミカが助けてくれる。
勉強不足を痛感する。
そして同時に電池の切れたふたりの寝姿に、
私は胸をなでおろした。
――――――――――――――――――――
リビングに戻るとお風呂上がりのレオさんが、
温めたミルクをミカに渡した。
ミカは手をつないでコップを私に手渡せば、
彼女の手のおかげで重力障害は発症しない。
「お疲れ様。明日家まで送ってあげるよ。」
「すみません。
色々とお世話になって。
それでさっきの話…。」
「またなんか変なこと言われた?」
「えっと…。」
「マコトちゃんを
『スターリング』にお誘いしたの。」
『スターリング』に住むのは今でもお金もかかり、
容易なことじゃないのは本を作った私でも分かる。
「ねーちゃん、それナイス。」
「いいんですか?」
「だって重力障害の人が地球で生きてくって
すっごい大変だよ。ストーマの話聞いた?」
ストーマはお腹に排泄口を人工的に増設する。
重力障害になると自然排泄も大変になる。
私はそれを思い返してうなずく。
「あくまで提案。
私に誘われたのを行動理由にせず、
自分で考えて。後悔しないように。」
「…はい。」
「なんならここに住んでみたら?
スズとスミのお世話手伝ってくれると助かる。
ねーちゃん私に任せっきりだし、ズボラだし。」
「そんなことないでしょ?」
「あるよ。
今日だって靴下脱ぎっぱなしだったよ。
いい年なんだから自覚してよー。」
「年は関係ないでしょ。年は。」
「そんなことでケンカしないでくださいよ。」
私に言われてふたりは我に返る。
「マコトちゃんがウチに泊まるなら、
オートマトンもう1体買ってこないとだな。」
「あーそうだね。」
「それって、高いんですよね?」
オートマトンは一般家庭で簡単に手に入るような
値段の代物じゃない。
介護用でリースを受けても相当な費用が掛かる。
「ねーちゃん金持ってるから大丈夫。
それに人命には代えられないから。」
「あ、そうそう。
夜おトイレ行きたくなったら、
私かスズ起こしてね。慣れてるから。」
「…大丈夫ですって。」
ミカは説明が足りないと思えば、
いつもひと言余計だったりする。
――――――――――――――――――――
ひとまず会社をしばらく休むことにした。
ミカから頂いたアドバイスから、
得られた保険料を生活費の足しにしている。
それからマンションを引き払い、
カバンひとつでミカの家に居候することにした。
ちびっ子ふたりは歓迎してくれたが、
ミカは「ホントに来た。」と驚いていた。
なんなのこの人…。
レオさんの手伝いの傍ら、
ミカについて重力障害に関する講義や、
講演会などに出席した。
ミカは世界的にも有名な研究者で、
オレンジ色の奇抜な外見が特徴の人気者だった。
講演で知ったことだけど、
彼女がオレンジ色にこだわるのは、
天狗にさらわれたときに青空でも
目立ちやすい色を選んだ結果だそうだ。
たぶん趣味に説得力を持たせただけだと思う。
彼女の部屋にはオレンジ色や
ライムグリーンの家具が多い。
そんな理由もあってか知らないけど、
柑橘類が好物でよく貰い物をしていた。
あと高齢の研究者から孫のように親しまれている。
けれど食べ物に釣られて依頼を引き受けるなど
スケジュール管理が雑なので、私が
マネージャーみたいな仕事をさせられた。
休職中なのに。
おまけに手伝いの私は、
水着姿で講演会の壇上に立たされたこともある。
重力障害で狂った体重計に乗せられ、
バケツの水を被り、シュノーケルで呼吸する。
重力障害は希少疾病だけれど、
年々増え続けている。
もしある日隣の誰かが発病したときに、
病気を知り、対策が取れる人が
ひとりでも多く必要になってくる。
それから日々の生活のことを、
講演会で登壇して話もした。させられた。
無茶振りをしたミカはレオさんに叱られていた。
ふたりを見るとどっちが姉なんだろうと毎回思う。
私も重力障害になってから、
色んなことが制限された。
私は発病してから意識した。
自分にできなくなったことがいくつかある。
お風呂やトイレにひとりでは入れない。
料理はできなくなった。
飲食は〈リポーシェン〉の誰かが
近くにいないと不安になる。
自分だけではできないこと、
誰かの手を借りたり、逆に手助けになること。
ずっと意識していなかったから、
気を抜くとすぐに失敗する。
ちょっとした失敗でも、
この障害が命取りになることを学んだ。
ミカがオートマトンを用意してくれたことには
私は黙って感謝する。
本人に直接言うにはまだなんか気恥ずかしい。
ミカたちと過ごしたおかげで
色々な考えが整理されていった。
ミカに振り回されることも多いけど。
立ち止まっていた私は
少しずつ歩きだした。
肌身離さず身につけていた
ネックレスを外して。
(了)
10人ぐらい入れそうな大きな浴槽。
私がスズリちゃんから手を離すと、
重力障害のせいでお風呂の湯が
身体にまとわりつく。
ひとりでは入れないと改めて実感する。
スミちゃんは息を止めて、
お風呂のお湯を身体に這わせると
全身を素早く、ただし雑に洗った。
結局3人で手を繋ぎ、交互に洗いあった。
料理で汚してしまったスウェットは、
黒色からピンク色に様変わり。
似合わなすぎて恥ずかしいが、
ちびっ子ふたりはとてもはしゃいでいる。
寝室では自分たちの能力を見せつけようと、
スズリちゃんは天井に張り付き、
スミちゃんは敷布団で簀巻きになって
私にひっつくように体当たりする。
私はふたりをなだめようとしたけど、
宿泊客の身なので強く言うこともできない。
先生役のレオさんがいないとこうなるんだね…。
当の先生は食器を洗って入浴の最中。
「お、着替えたの。
その色! ピンクか…似合う似合う。ぶふっ!」
「笑わないで。」
寝室に入ってきたミカが、
ちびっ子ふたりを捕まえて器用に寝かしつける。
〈リポーシェン〉のスズリちゃんには
掛け布団をベルトで床に固定し、
〈ヘビィ〉のスミちゃんには、
布団で窒息しないように敷布団と固定する。
オートマトンも部屋の隅に鎮座していた。
もしものときに対応するのだろう。
「ふたりとも寝るよー。」
「今日はなんの本?」
紙袋を持ってきたミカが、
いくつかの本を取り出す。
子供向けの絵本や図鑑の類ではない。
10歳ならもうそんな本読まないかもしれない。
けれどもミカが持ってきた本は、
『人体の構造』や『機械人形の機能』、
『月面からの火星開発』などの専門書ばかり。
大人向けの本で、
まず10歳が読むような本じゃない。
「いつもこんなの読んでるの?」
「あたしがいるときは、
だいたいこんなんだよ。」
「ふたりとも読めるの?」
「もう読めるよ。」
「お父さんとお母さん、宇宙にいるんだよ。」
まさかと思い、ミカの顔を見た。
「ふたりの両親はあたしの知り合いで、
いまは火星で地質学の研究してるの。」
予想と違っていてホッと胸をなでおろす。
その時、一冊の本が私の目に留まる。
真っ暗な宇宙に漂う、巨大な環状構造物。
宇宙居住区『スターリング』が表紙の本。
今どき紙の本などどうかと思ったが、
手にしたときの重さが不思議と懐かしい。
「…これ、私の本だ。」
正確には私が担当した本。
入社してまもなく、研修を終えて
社内制作で任された最初の案件。
表紙を開くと、懐かしい言葉がある。
『明日は、未来へ。』
いくつか、文言の候補を挙げたが、
最後の最後まで悩んだ箇所だ。
この本を担当するにあたって、
勉強のため、関連書物を熱心に読んだ。
上梓後、ショウさんに褒められたのを
今でもよく思い出す。
「再来年、そこに移住すんの。」
「ウソっ?」
「ウソじゃないよ。スズスミも一緒に。」
「そうだよ。」
「お父さんたちに会いに行くんだ。」
「あたしの研究に協力してくれてる
ふたりは優秀な助手たち。
今はみんなでお金貯めてるのさ。」
「そしたら火星行くんだよ。」
「行くー。」
「えーいいなー。楽しみだね。」
「マコトちゃんも来る?」
あまりのことに目を見開いて、ミカを見た。
変に期待を抱くちびっ子ふたりの視線が怖い。
「〈ヘビィ〉だし。
研究には都合が良さそう。」
「もしかして、人体実験でもするの?」
「まさか。人聞きの悪い。
そんなのしないわ。
それに地球の重力圏から外れると、
やっかいな重力障害もなくなるし。」
「へぇ…そうなの?」
ミカは首をかしげる。
「あれ、言わなかった?」
「言ってないし。聞いてない。」
「えーだって、
重力障害は地球の重力に関係するもの。」
「なんで私、宇宙?」
私は手元の本に目を落とす。
「マコちゃんも来るの?」
「あのね! スミも〈ヘビィ〉だよ!」
「スズは〈リポーシェン〉だよ。」
「知ってる知ってる。
マコトちゃんが一緒に来るかは
マコトちゃん次第だけど、誘ったのは
同郷のよしみってやつね。考えといて。
じゃあ今日は、この本読もっか。
マコトちゃんが読んでくれるから。」
「勝手すぎ。」
ちびっ子ふたりから眼差しが痛い。
観念して3人で横になって私は本を読んだ。
6年も昔に作った本だ。
この本を作っていたときは、
いつか自分も宇宙へ行くんだと思ってた。
『明日は、未来へ。』
懐かしさに1ページずつ読み上げると、
ふたりから高度な質問攻めに合った。
たどたどしい説明の度に、
横で聴いているミカが助けてくれる。
勉強不足を痛感する。
そして同時に電池の切れたふたりの寝姿に、
私は胸をなでおろした。
――――――――――――――――――――
リビングに戻るとお風呂上がりのレオさんが、
温めたミルクをミカに渡した。
ミカは手をつないでコップを私に手渡せば、
彼女の手のおかげで重力障害は発症しない。
「お疲れ様。明日家まで送ってあげるよ。」
「すみません。
色々とお世話になって。
それでさっきの話…。」
「またなんか変なこと言われた?」
「えっと…。」
「マコトちゃんを
『スターリング』にお誘いしたの。」
『スターリング』に住むのは今でもお金もかかり、
容易なことじゃないのは本を作った私でも分かる。
「ねーちゃん、それナイス。」
「いいんですか?」
「だって重力障害の人が地球で生きてくって
すっごい大変だよ。ストーマの話聞いた?」
ストーマはお腹に排泄口を人工的に増設する。
重力障害になると自然排泄も大変になる。
私はそれを思い返してうなずく。
「あくまで提案。
私に誘われたのを行動理由にせず、
自分で考えて。後悔しないように。」
「…はい。」
「なんならここに住んでみたら?
スズとスミのお世話手伝ってくれると助かる。
ねーちゃん私に任せっきりだし、ズボラだし。」
「そんなことないでしょ?」
「あるよ。
今日だって靴下脱ぎっぱなしだったよ。
いい年なんだから自覚してよー。」
「年は関係ないでしょ。年は。」
「そんなことでケンカしないでくださいよ。」
私に言われてふたりは我に返る。
「マコトちゃんがウチに泊まるなら、
オートマトンもう1体買ってこないとだな。」
「あーそうだね。」
「それって、高いんですよね?」
オートマトンは一般家庭で簡単に手に入るような
値段の代物じゃない。
介護用でリースを受けても相当な費用が掛かる。
「ねーちゃん金持ってるから大丈夫。
それに人命には代えられないから。」
「あ、そうそう。
夜おトイレ行きたくなったら、
私かスズ起こしてね。慣れてるから。」
「…大丈夫ですって。」
ミカは説明が足りないと思えば、
いつもひと言余計だったりする。
――――――――――――――――――――
ひとまず会社をしばらく休むことにした。
ミカから頂いたアドバイスから、
得られた保険料を生活費の足しにしている。
それからマンションを引き払い、
カバンひとつでミカの家に居候することにした。
ちびっ子ふたりは歓迎してくれたが、
ミカは「ホントに来た。」と驚いていた。
なんなのこの人…。
レオさんの手伝いの傍ら、
ミカについて重力障害に関する講義や、
講演会などに出席した。
ミカは世界的にも有名な研究者で、
オレンジ色の奇抜な外見が特徴の人気者だった。
講演で知ったことだけど、
彼女がオレンジ色にこだわるのは、
天狗にさらわれたときに青空でも
目立ちやすい色を選んだ結果だそうだ。
たぶん趣味に説得力を持たせただけだと思う。
彼女の部屋にはオレンジ色や
ライムグリーンの家具が多い。
そんな理由もあってか知らないけど、
柑橘類が好物でよく貰い物をしていた。
あと高齢の研究者から孫のように親しまれている。
けれど食べ物に釣られて依頼を引き受けるなど
スケジュール管理が雑なので、私が
マネージャーみたいな仕事をさせられた。
休職中なのに。
おまけに手伝いの私は、
水着姿で講演会の壇上に立たされたこともある。
重力障害で狂った体重計に乗せられ、
バケツの水を被り、シュノーケルで呼吸する。
重力障害は希少疾病だけれど、
年々増え続けている。
もしある日隣の誰かが発病したときに、
病気を知り、対策が取れる人が
ひとりでも多く必要になってくる。
それから日々の生活のことを、
講演会で登壇して話もした。させられた。
無茶振りをしたミカはレオさんに叱られていた。
ふたりを見るとどっちが姉なんだろうと毎回思う。
私も重力障害になってから、
色んなことが制限された。
私は発病してから意識した。
自分にできなくなったことがいくつかある。
お風呂やトイレにひとりでは入れない。
料理はできなくなった。
飲食は〈リポーシェン〉の誰かが
近くにいないと不安になる。
自分だけではできないこと、
誰かの手を借りたり、逆に手助けになること。
ずっと意識していなかったから、
気を抜くとすぐに失敗する。
ちょっとした失敗でも、
この障害が命取りになることを学んだ。
ミカがオートマトンを用意してくれたことには
私は黙って感謝する。
本人に直接言うにはまだなんか気恥ずかしい。
ミカたちと過ごしたおかげで
色々な考えが整理されていった。
ミカに振り回されることも多いけど。
立ち止まっていた私は
少しずつ歩きだした。
肌身離さず身につけていた
ネックレスを外して。
(了)