「ふふっ。ウチの騎士様、みーつけたっ! 格好良いし、ウチより少し年上で、命の恩人で……ウチ、お兄ちゃんと結婚する!」
再びナターリヤが俺に抱きつき、キスしてきた。
女の子特有の柔らかさが俺を包み込み、優しい香りが鼻をくすぐってくる……って、この子はアーニャの妹だし、何歳差だと思っているんだ。
「ナターリヤ。そういうのはまだ早いだろ」
「まぁ、貴方。ナターリヤはもう十八歳なんです。恋愛くらいして当然です!」
「お、お前まで……だが、せめて父さんの居ない所でしてくれないか?」
ご両親が――特にお父さんが困惑する中、当のナターリヤは、
「ムリムリ。恋する乙女は誰にも止められないもん!」
そう言って、再び俺の胸に顔を埋めてくる。
しかし、ナターリヤは見た目が中学生だけど、十八歳なのか。
そういえば、アーニャも見た目に反して二十歳だっけ。
「ちょっと待ってっ! お兄さんは……お兄さんは、ボクのお兄さんなんだもんっ!」
「セシル!? 何を!?」
「やだっ! お兄さんはボクと一緒に居るの!」
ナターリヤに対抗するようにして、何故かセシルまで俺に抱きついてきた。
もう本当に訳が分からないんだけど。
お父さん――ミハイルさんもオロオロしているし……
「って、ミハイルさん。今、召喚しちゃって大丈夫でした!? 仲間と一緒に戦闘中とかではありませんか!?」
「それは大丈夫だ。魔王城付近の森で休憩していた所だからな。だが、突然俺が居なくなった事で、混乱はしていそうだが」
一先ず、今すぐ危険な事は無いと聞いて安堵する。
ナターリヤとセシルへ真面目な話をすると説明し、一旦離れてもらって皆でリビングへ。
「ミハイルさん。先程、奥さん――フェオドラさんとナターリヤさんを……」
「お兄ちゃん。ナターリヤって呼んで」
「……ナターリヤを召喚した後、二人が苦しんで居た理由に心当たりはありませんか? 二人……いえ、アーニャを含めて三人とも強力な呪いが掛けられていたんです」
真面目なトーンだからか、ナターリヤが甘えるようにして呼び方だけを訂正するに留まってくれた。
いや、本来は呼び方も、どうでも良いと思うんだけどさ。
「呪い……ですか。可能性があるとすれば、私たちが魔王の側近を倒したからですかね?」
「魔王の側近?」
「えぇ。魔将軍とか呼ばれてたかな?」
「そんなのを倒すなんて、本当に凄い……あれ? という事は、ミハイルさんの家族だけでなく、一緒に魔将軍を倒した仲間の家族も同じ呪いに掛かっているのでは!?」
「何だって!?」
それに気付いてからは、とにかくスピード勝負だった。
ミハイルさんの二人の仲間の名前を聞いて召喚し、混乱する二人に事情を説明して、また家族の名前を聞いて召喚して……薬を沢山用意しておいて本当に良かったよ。
呪いを受けていた人たちは、やはりアーニャの様に知らない場所へ飛ばされ、呪いによって苦しんで居たらしい。
全員助ける事が出来たて良かったものの、大所帯になってどうしたものかと思っていると、不意にいつもの声が頭に響く。
――英雄たちの家族を救った事により、貢献ポイントが百ポイント付与されました。貢献ポイントが一定値を超えたので、城魔法の改修及び増築が行えます。リストから一つ選んでください――
それから銀色の枠が現れ、実家の増改築リストが表示された。