「美容に良さそうな物って何だろ?」

 ガーネットに頼まれ、皆で美容について話すが、これと言った物が出てこない。
 そんな中、ガーネットがセシルとアーニャの顔をまじまじと見つめだす。

「それにしても……こっちのエルフさんも、そっちの猫ちゃんも、二人とも肌が綺麗だよねー」
「まぁ二人とも若いしね」
「若い? まぁ猫ちゃんはわかるけど……いや、エルフさんも寿命から考えれば若いかー。うーん、女王様は結構……げふんげふん」

 ん? アーニャと俺はちゃん付けなのにセシルだけさん付け?
 見た目は十代前半だけどセシルの実年齢って……いや、考えないでおこう。

「セシルとアーニャは、美容の為に何かしてる?」
「ボクは何もしてないよー」
「私も特には」

 だよねー。
 普段、二人が美容に気遣って何かしている様子は無さそうだしね。
 毎日お風呂には入っているけど、それは清潔を保つ為だし。

「二人とも何もしていないって割に、髪の毛が綺麗だよねー」
「でも本当に、何もしてないよー?」
「そうですね。普通にお風呂で髪の毛を洗っているだけですし……あ、シャンプーを使わせてもらっているから?」

 二人の言葉を聞き、

「シャンプー……って何?」

 ガーネットが不思議そうに首を傾げたので、シャンプーの説明をして、お風呂へ連れて行き、実際に使って貰う。

「凄い! あわあわだーっ!」

 ガーネットは文化や風習が違うのか、服を脱がずに髪を洗っているけど……それはさておき、全員が泡に包まれる。
 一先ずこれで解決しそうなので、ガーネットが持ってきた花粉をフェイス・ローションにして、調剤室にある金香樹からシャンプーも作る。

「ありがとー! 本当に助かるよー。あ! ちょっと待ってて……」

 何かを閃いたらしいガーネットが、ローションやシャンプーを入れた小瓶をそのままに、窓から外へと出て行ってしまった。
 この状態で家を出て実家を消す訳にもいかないので、それぞれ好きな本を持ってリビングで寛いでいると、

「お待たせー! って、何これ! 本が沢山!」
「ガーネット。この人たち、本当に私たちの事が見えているの?」

 ガーネットが別の妖精を連れて来た。
 髪の毛が黄色で、ガーネットよりも少し背丈が大きい妖精だ。

「ガーネット。そちらの妖精さんは?」
「紹介するねー! この子はトパーズ。私のお友達なんだー」
「は、はじめまして。トパーズです。女王様のローションを作っていただいた方だと聞いています。その件については、本当にありがとうございます」

 宙に浮かぶトパーズから深々と頭を下げられた。
 同じ妖精でも、ガーネットとは随分と性格が違うらしい。

「でね、このリューちゃんが今度は髪の毛を綺麗にするアイテムを作ってくれたの。それで、お礼がしたいからトパーズの加護をあげて欲しいんだー」
「私の? ガーネットが自分であげれば良いのでは?」
「私はもう、ローションを作って貰った時にあげちゃったんだー」
「なるほど。あの、リューチャンさん。何か修得したいスキルなどはありますか?」

 ガーネットのせいで俺の名前がおかしな事になっているが、スキルが貰えるのはありがたい。
 前に貰った倉魔法は便利なのだが、俺が本当に欲しかったのは黒魔法だ。
 トパーズはガーネットよりも真面目そうだし、間違えたりはしないだろうが、念のため黒魔法とは違うものをお願いしてみよう。

「じゃあ、何か攻撃系の魔法をお願いします」
「攻撃系の……わかりました。では、リューチャンさんに虹魔法が使えるようにしましょう」

 虹魔法? 何だろう。聞いた事が無いんだけど。

「では、そのままお待ちください」

 前回と同様に動くなと言われ、直立不動で立って居ると、頬に何かが触れる。

「これでリューチャンさんには私の――エインセルの加護により、新たなスキルが備わりました。えっと、シャンプー……ですかね。ありがとうございます」
「リューちゃん、ありがとー! またよろしくねー!」

 ガーネットのピクシーに対して、トパーズはエインセル。妖精にも種族があるらしい。
 二人の妖精がそれぞれ小瓶を手にして窓から飛び去って行き、

――新たなスキルを修得しましたので、二次魔法「トレース」が使用可能になりました――

 いつもの声が響いた。
 ……で、毎度ながら二次魔法って何なのさ。
 虹魔法っていうのは、どこへ行ったんだー!