「あのお家をグレードアップ出来るんだ。凄いねー」
「うん。でも、さっき言った中から一つだけらしいんだ」

 一通り銀の枠に書かれた内容を話し、二人の意見を聞いてみた。

「ボクは何でも良いと思うよー」
「んー、アーニャは?」
「リュージさんのお家なので、リュージさんが思うようにすればよろしいのかと」

 アーニャの言う通りなんだけど、実際に使っている人の意見を聞きたいじゃないか。
 例えば、リビングはもっと快適な方が良いとか、キッチンにこんな機能があれば良いのに……とか。

「アーニャはキッチンに足りない物とか無い? 食洗機が欲しいとか」
「食洗機って、何でしょうか」
「いや、何でも無い。忘れて」

 コンロや冷蔵庫は普通に通じるのに、食洗機は通じないのか。
 この世界の技術水準は分からないけど、食洗機があれば、凄く楽になると思うんだけどね。
 キッチンの機能UPっていうのが食洗機とは限らないけどさ。

「セシルは、リビングや寝る部屋を、広くして欲しいとかって思いはない?」
「ボクは別にいいよ……むしろ、狭くしてくっつきたいくらいだし」
「ん? 何か言った?」
「何でも無いよー」

 何か小声で言っていたのは聞き取れなかったけど、セシルはゴロゴロしながらラノベが読めればそれで良いか。
 けど、リビングの機能UPって何だ? マッサージ機導入とか?
 でも、仮にマッサージ機が設置されたら、そこからセシルが動かなくなる気がする。
 この前みたいに、大量の患者さんが来るなら待合室を広くするのはアリな気がするんだけど、もうあんな事は起こって欲しく無いんだよね。
 街中の人が何かの病気に掛かってしまうような事件が起きて欲しく無いし、俺たち三人で大勢の患者さんを看るのも無理があるしさ。
 とはいえ、備えておくという意味では、候補に入るかな。
 だが実は俺の中ではこれというのがあったりする。
 セシルとアーニャから意見がなかったし、これにしてしまおう。

「俺は屋根裏にしようと思うんだ」
「それ? まぁお兄さんがそれが良いって言うのなら、構わないんじゃないかな?」
「正直、私の中では一番無い……いえ、リュージさんが決めるべきなので、宜しいのではないでしょうか」

 あれ? 屋根裏だよ? 超ワクワクしない? ロマンがあると思うんだけど。
 どうして二人が喜ばないのだろうかと、不思議に思っていると、

「えっと、屋根裏って隠れ家みたいだもんね。う、嬉しいなー」
「そ、そうですね。一人になりたい時にはうってつけですし」

 二人にフォローされてしまった。
 アーニャのは、フォローにすらなって居ない気もするんだけど、そんなに屋根裏はダメなのだろうか。
 でも二人は好きにして良いって言っているし……よし。屋根裏部屋にしよう!
 俺にしか見えていない銀色の枠の中から、屋根裏の文字をタッチすると、

――城魔法の増築を行いました。屋根裏が追加されました――

 増築完了の言葉が聞こえてきた。

「よし、増築出来たって。早速確認……って、馬車の荷台の中じゃ無理か。次の街へ着いたら、先ずは街を出るか空き地を探して、真っ先に確認しよう」

 一人でソワソワしながら馬車に揺られ、日が完全に落ちかけた頃に、

「聖者様、着きましたぜ。アヴェンチェスの街です」

 ようやく乗合馬車が停止し、次の街へと着いた。

「ありがとうございました」
「いえいえ、街を救ってくださった聖者様の為です。何て事はありません」

 よくよく話を聞くと、本当はもっと時間がかかる距離だったのだが、俺たちの為に急いでくれたそうだ。
 ありがたい……けど、喋る度に聖者って呼ぶのは勘弁して欲しい。

「この街には、大昔の円形闘技場が遺跡として残っているんです。有名な遺跡なんで、時間があったら足を運んでみてくださいよ」

 それだけ言って、御者の人が馬車と共に去って行った。

「お兄さん、闘技場だって。何だか面白そうだね」
「闘技場かぁ。やっぱり、そこで人が戦っていたんだよね?」
「多分ね。戦いに興味は無いけど、遺跡として見てみたいかな」
「そうだね。食料や服を買うついでに、ちょっと覗いてみようか……って、それよりも屋根裏を確認だっ!」

 暗くなった街の中で運良く広い場所を見つけたので、そこへ実家を呼び出し、就寝する事にした。