「病み上がり直後に申し訳ないのですが、エミリアさんが蛙毒を受けていた理由を知りたいんです。何か心当たりはありませんか?」
「蛙毒? 私がですか?」
「そうです。エミリアさん程重症では無かったのですが、この街の――特に女性が蛙毒に掛かっていたんです」

 女性が大半とはいえ男の子も掛かっていたので、性別が関与している訳では無く、単に体力の有無だと思う。
 この街の全女性がクリニックに来た訳ではないだろうし。

「ララさん。蛙毒の症状が出始めたのって、ここ数日の話って言っていましたよね?」
「はい。地震の直後だったので良く覚えています」
「地震で毒を持つ蛙が大量発生したとか? でも蛙なんて全く見かけないしな」

 そもそも街の中に川や池なんて無く、蛙を見た事も無い。
 それに、自分で言っておいてなんだけど、地震と蛙の大量発生が結びつかないしね。

「エミリアさんが地震の後に始めた事ってありませんか? 日常生活に新しい何かを取り入れたとか」
「特に何もしていませんわ。でも、地震の後から急激に体調が悪くなりましたの。ですから、普段よりも沢山お水を飲んだのだけど……」
「沢山水を……って、そこまで暑くもないのにですか?」
「えぇ。お水って凄いのよ? 飲んでも太らないから健康的だし」

 まぁ水はカロリーゼロだし、太る事は無さそうだけど、飲みすぎもどうなのだろうか。

「エミリアさんはお水ダイエットの提唱者で、この街では数ヶ月前から女性の間でブームになっているんですよ」
「お水ダイエットって、要は水しか飲まないって事ですか!?」
「そこまで極端ではないけど、普段から水を多く飲みましょうっていうダイエットですよね」

 まぁそれくらいなら良いのかな?
 お医者さんごっこスキルしか持ってないから、良いか悪いかも俺には分からないけど。

「ララさん。お水ダイエット初心者はそれでも良いですが、上級者は朝食以外全てお水です。食事の代わりにお水を飲むのが、真のお水ダイエッターです」

 流石にそれはやり過ぎじゃない?
 無茶苦茶なダイエットは身体を壊しそうだけど。

「……ん? という事は、この街の女性は沢山水を飲む人が多いんですね?」
「そうですね。私が提唱したお水ダイエットを大勢の方が実践されていますの」
「それって、水道から出た水そのままですか?」
「もちろんです。この街の傍にある山から流れ出る水を取り込み、水道として完備されていますからね」

 水を煮沸せずに、そのまま飲むのか。
 日本だと水道水は消毒されているけど、この世界の水道って大丈夫なのか?

 整理すると、この街の女性は水を沢山飲む。
 おそらく、川から取り込んだそのままの水。
 数日前の地震の後から、体調を崩す人が続出した。
 ……って、これから推測されるのは、地震を機に水源となっている川に毒を持つ蛙が棲みついたって事じゃないの?

「ララさん。この街に蛙毒が広まった原因が分かったかもです」
「本当ですか!?」
「確証はありませんが、一先ず冒険者ギルドへ原因の討伐を依頼したいと思います」
「流石リュージさんですね! 冒険者ギルド……に用事があるのであれば、私も一緒に参りましょう」

 念のためエミリアさんにキュア・ポーションを渡し、ララさんと共に皆で冒険者ギルドへ。
 ちなみに、エミリアさんが重症である事をララさんが知っていたのは、元騎士として故郷であるこの街を良くしようと、普段から街の人々に声を掛けている賜物なのだとか。
 ララさんは凄いなぁ。ララさんあってのこの街ではないだろうか。

「ところでお兄さん。蛙毒の原因って何なの?」

 セシルが尋ねてきたので、俺の推測を話し、川に居るであろう蛙の魔物を、冒険者に倒して貰おうと考えていると告げると、

「なるほどねー。流石、お兄さん」
「いや、確証はないけど……って、ララさん? どうかされましたか?」
「いえ、ちょっと……」

 ララさんが眉をひそめる。
 なんだろう。
 この世界の事を知らない、的外れな推測だったのだろうか。

「あの、ララさん。間違っていそうであれば、教えていただけると……」
「いえ、そうではないんです。ですが……」
「ですが?」

 歩みを進めつつララさんの言葉を待って居ると、冒険者ギルドの建物に到着し、

「おや、これはララ殿ではないですか。騎士崩れ……失礼、商人ギルドの職員が当ギルドへ何の用事でしょうか?」

 ムカつく禿げたオッサンが現れた。