「変わった形ですが、これは家ですか?」
「家でもありますが、診療所でもあるんですよ」
「診療所?」
「小さな病院ですね。俺はスキルでこの診療所を呼び出せるんですが、内密にお願いします」
「分かりました」

 住居用の扉からではなく、正面の斉藤クリニックとしての入口から入ると、そのまま診察室へ。
 キョロキョロと周囲を見渡すお姉さんに、椅子へ座ってもらい、

「では症状を診察しますので、む……胸を見せてください」

 言った! 言ったよ!
 勇気を振り絞り、胸を見せてくれと言うと、

「……私が胸を見せたら、この町を救ってくれますか?」
「はい。救ってみせます」
「分かりました。本当に町を救ってくれるというのであれば、この身を……好きにしてください」

 お姉さんが何を勘違いしたのか、ブラウスを脱ぎ、そしてスカートを脱ぎ始めた。

「スカートは脱がなくて大丈夫ですから! というか、ブラウスも全部脱がずに、前のボタンを外すか、下から捲ってくれるだけで良いんですってば」
「着たままがお好みなんですか?」
「何の話ですかっ!? 触診って言って、胸を触る事で相手の健康状態を知る事が出来るんですよっ!」

 診察について説明すると、お姉さんが「すみません。身体目当てなのかと」と、頬を赤らめながら謝ってきた。
 改めて考えてみると、この世界に医者って少ないんだよね。
 これからは、初めて来る人に触診について説明しなければならないな。
 お姉さんが服を着て、ブラウスのボタンを幾つか外して大きな胸だけ出して来たので、その白い膨らみに触れると、小声で診察スキルを使用する。

『診察Lv1
 状態:蛙毒(弱)』

 蛙毒って何だろう。
 だけど詳細は分からないものの、症状自体は分かった。これなら対応するポーションが作れるだろう。

「一先ず症状が分かったので、ちょっと待っていてください」
「えっ!? 今、私の胸を触っただけですけど、あれで分かったんですか!?」
「はい。すぐに戻ってきますので」

 そう言って、セシルを連れて診察室から調剤室へと移動する。

「セシル。この中で毒に効く薬草ってどれか分かる?」
「毒消しだったら……これかな。シーブーキっていう薬草なんだけど、様々な毒に効くよ」
「分かった、ありがとう。……調合」

 セシルに教えてもらった薬草を調合すると、濃い緑色の液体が出来た。
 蛙毒に効く薬なのかを調べるために鑑定してみると、

『鑑定Lv2
 パナケア・ポーション
 Aランク
 様々な状態異常を治す』

 何とも言い難い効果が表示される。
 様々って一言で纏められてしまったけど、蛙毒に効果はあるのだろうか。
 治す蛙毒は弱って表示されていたし、Aランクの薬だから大丈夫な気はするけど、胸を触らせてもらって効果がありませんでした……だと、ただの変質者だからね。
 詐欺扱いされても困るけど……でもセシルが教えてくれた薬草だ。
 一先ず、このポーションを出す事にして、小さなビンに移し、診察室へと戻る。

「お待たせしました。こちらの薬で治るはずです」
「随分と濃い緑色なんですね」
「えぇ。良く効く薬ですから、飲んでみてください」

 お姉さんが俺の言葉に従い、ポーションを飲み干すと、

「……あれ? 身体が痛く無い!?」

 突然立ち上がり、その場でジャンプしたり、屈伸したりする。
 スカートでそんな事をするからパンツが見えて……まぁさっきスカートを脱ごうとしていた時点で見えていたけどさ。

「先生! 凄いです。ここ数日の身体の痛みが消えた上に、昔から悩んでいた手足の冷えも消えましたっ!」
「先生って、俺の事ですか? ……えー、効いたみたいで良かったです。念のため確認するので、もう一度触診させてもらっても良いですか?」
「はい! 先生になら、どれだけ触られても構いません!」

 いや、だから変な目的じゃないんだってば。
 何故か先程よりも大きく開けられた胸に触れ、診察スキルを使用すると、

『診察Lv1
 状態:健康。状態異常無効化(二十四時間)』

 ちゃんと健康状態となっていたのだけど、状態異常無効化などと表示されていた。
 そうか。Aランクのポーションを渡したから、暗視目薬の時みたいに、本来の効果に加えて、付随効果があったのかも!
 次からは何度か調合して、Bランク以下のポーションを出す事にしようか。