夜空を見上げて、綺がふーっと息を吐く。空気に溶けていく二酸化炭素みたいに、空っぽな自分も一緒に開放してあげられたら、世界はもっとラクだった。

それが出来ないから、みんな、何かと闘って生きている。


世界は、私たちのために出来てはいない。だから───見つけるらしい、生きる理由を。




「てかね。あんたの恋、確実に間違いだからね」

「間違いかどうか蘭が決めることじゃないですなぁ」

「だって私たち、まだ”とりあえず”友達になったばっかりだもん」




可笑しな奴に捕まった。恋も友情もまともに区別できていないような男。けれど、この出会いが漠然と、私にとって大切でかけがえのないものになるような気がしたから。



「……ほおぉ、蘭 かわいいとこあるね」

「うっさい。また聞かせてよね、綺のどうでもいい話」

「どうでもいいってなんだよ。どうでもよくねーよもはや恋バナだぞ」

「だから違うって…」


また きみのどうでもいい話(恋バナ)、聞いてあげようと思う。