レモンサワーを2本抱え、レジに向かう。この時間にいるのは、どこかやる気のなさそうな大学生の男性店員。週に何度も来ているから、すっかり顔は覚えてしまった。
【幻中】 と、なんて読むのか分からないネームプレートが左胸に付いていて、僕は密かに彼のことをゲンチュウさんと呼んでいた。
異動の関係で僕がこの辺りに越してきたのは半年前のこと。それ以来、深夜帯にレモンサワー2本と86番の煙草を買いに来るのが日課になった。いわゆる、常連と言うやつである。
ゲンチュウさんも、多分 僕のことを覚えてくれているのだと思う。レモンサワーをバーコードに通しながら、僕が「あと86番ください」って言うのを待っているようにも思えた。
このコンビニで言う86番はセブンスターだ。マールボロもメビウスも味わったことがあるけれど、なんだかんだセブンスターに落ち着いた。
社会人になってからすっかり生活の必需品になってしまったそれである。