優しく温かい家だと思う。
とても恵まれていたと思う。

蘭に会えない日が続いた時はどうしようかと思ったけれど、思い切って夜をともに越えたい人がいる話をしたところ、21時半までに家に帰るという条件下であれば良いと言われた。


母は、会ったこともない蘭のことをやけに心配していて、「優しくしれあげなさいね」と言った。父は、大切にした人を大切にしたいときに大切にしろと言った。妹は、「今度顔見せて」と言った。


家族の理解もあり、蘭と会うことは、俺の生活の一部になった。太陽が出ている時間に会うことも増え、蘭と過ごす時間の使い方のキャパが拡がり、藤原ちゃんとの交流も含めてとても有意義な日々が続いていた。



「気を付けてね」

「おう」



今日もいつも通り、公園で待つであろう蘭のもとに向かうつもりでスニーカーを履いた。かかとを2回鳴らし、ポケットにスマホと財布が入っていることを確認してドアノブに手をかける。

すると、「あぁ、」と思いだしたように母が口を開いた。