「不良少女、名前は?」
彼は私に会いに、23時過ぎの公園にやってきた。
私は彼を知らない。言ってしまえば不審者のようなもので、そんな彼に個人情報を与えることにはは少々抵抗があった。口を噤む私に、「怪しんでんのかおまえ」と寂しそうな声がかかる。
怪しんでるよ、そりゃあそうでしょ。
「……名生 蘭」
だけどでも、名前くらいなら教えてやってもいいと思えたのは、彼の顔がイケメンだったから……ということにしておきたい。
もちろん、普段から面食いをかましているわけでは決してない。ただ、理由がほしかっただけだ。不審者かもしれない男に衝動的に名前を教えるという行為に、訳をつけておきたかった。
深夜のテンションは、フツウの感覚を麻痺させる。