どうせなら自分じゃ買わないような高いアイスを買おう。ハーゲンダッツをひとつ買っても余る値段だし……真夜中さんにもおすそ分けしようかな。



「菩薩くんのところでも行くんすか」


クッキー&クリーム味のハーゲンダッツをふたつ持って再びレジに向かった。ピッとバーコードをかざしながら、真夜中さんが問う。


「まさか。この一個は真夜中さん用です」

「え」

「あげます。いつも相談乗ってくれてるんで」

「つってもおれ、半分くらいちゃんと聞いてないっすよ」

「聞き捨てならないですね」

「ジョークです。お会計、544円です」

「……あ、44円貸してください」

「ばかやろうっすね。算数からやり直しましょう」



ふはっと軽く笑われる。



「ちなみに、この50円返そうとかは思わなくていいっすからね。おれも一応大学生だし、年下の女の子に50円返せよ!とか言ってたらダサいじゃないすか」


ポケットから50円取り出した真夜中さんが私の心を先読みして言うものだから、お言葉に甘えて「ありがとうございます」とだけ言った。