今日を楽しみにしていたのは、きっとみんな同じだ。
失った時間を上書きしたい。
今しかできない青春を堪能したい。
「デートみたい、じゃなくて、デートだし」
制服は無敵だ。着るだけで、女子高生の肩書を背負うことができる。青春の二文字が似合う人になれるから。
それだけで、どうしようもなく心が躍るのだ。
「蘭ちゃんわたしの存在忘れてない……?」
「杏未と会うのだってデートだよ」
「だってよ日之出くん!蘭ちゃんを独り占めはさせないんだからねっ」
「藤原ちゃんホント蘭のこと好きだよな」
「日之出くんも蘭ちゃんのこと好きすぎ!」
「ホントふたりとも静かにして……」
綺と杏未と過ごす時間は、何気ない会話だけでこんなにもワクワクする。
今日という日の1分1秒を、すべて逃したくないと思った。