辺りは変わらず静けさに包まれている。住宅街だからだろう。23時なんてまだまだ夜のはじまりに過ぎない。もっと街に近いところにいたら、人も灯りもあるのだと思う。
(散歩……しよっかな)
足を滑らせないようにそっとブランコを降りた。
生憎ハンカチを持ち歩いていないから、濡れたベンチには座れない。見たい動画があったけれど、座れないんじゃなあ…と諦める。
ながい夜を超えるために散歩でもしようかと思い立ち、公園を出ようとした。
──そんな時だった。
「…あ、いた」
「は?」
「不良少女。あんたはきっと、ここに居ると思ってた」