綺からの言葉が欲しかった。他の誰でもない綺に、私は褒めてほしかった。
何度綺の前で涙を流したかわからない。その度に、零れる雫を拭ってもらった。今日はハンカチを持ってきていたようで、タオルのやわらかい感触が頬をかすめた。
「綺……、ありがとう」
「うん、どういたしまして」
ふたり分の呼吸が夜に落ちた。
綺。あなたは、私のことをみていたら元気が出るんでしょう?私が頑張ったら、きみも変わりたいって思うのかな。綺の過去に、私はどうしたら寄り添うことができるのかなぁ。
考えても分からなくて、涙を拭うハンカチにそっと手を伸ばす。指先と指先が不意に触れ、綺がぴくりと肩を揺らした。
「あや、」
「…なに?」
私も、きみの力になりたい。きみに絡まる過去の糸をどうにか解いてあげたい。
───だけどまだ、私にそんな力はなさそうだから。