死ねとは思わないと言えば、やえは俺を優しいと言った。俺がこれまで関わったことのないようなタイプで、すこしだけ、苦手だと思った。
繊細なやえと、幸せそうな俺。
馬が全然合わなくて、正直話すのはそこまで楽しくもない。それでも、俺がやえを放っておいたら、彼女は本当に死んじゃうのではないかと思ったから。
学校に行かなくてもいい。つまらない人生でもいい。それでも人が死ぬのはとても不幸で悲しいことだと、小学生なりに俺は そう思っていたから。
「やえちゃんが死んだら悲しいよ」
「優しくしなくていいよ。気使わないで」
「気使うとかじゃない。一回死んだら、もう二度と会えなくなるのが悲しいから。やえちゃんのこと、俺はまだなんにも知らないから、せっかく近所にいるのに悲しいなって思ったんだよ」
「……」
「生きてて楽しいこと、多分、おれとやえちゃんが知らないことがきっと沢山ある気がする」
「……綺くんは変だよ」
「やえちゃんは、センサイソウだ」
「だからね、それは悪口なんだよ」
やえが少しでも笑っていきていられるなら、と 可能な限り彼女のそばにいることを決めた。