「蘭の進んだ一歩は、蘭が思ってる以上にでかいと思う。変わるよ、ここから。蘭の世界は、今よりもっと大丈夫になる」
「…、保証は?」
「ねーけど。でも、わかる。蘭は大丈夫だ」
「大丈夫」という言葉には、信ぴょう性も根拠もない。だから母は、私が不登校になってから一度もその言葉をかけたことはないのだと思う。
いつか大丈夫になること、いつかまた、誰かと絆を築くことを祈っていたとしても、大丈夫 なんて曖昧な言葉は一度たりとも言わなかった。そんな母に救われていたのだ、私はずっと。
では、今はどうだろう。
綺の 保証のない「大丈夫」が、どうしようもなく心に沁みている。
綺だから、だろうか。
彼はとても適当で能天気だけど、人のことをよく見ているから。変化に酷く敏感だから。
そんな綺にもらう言葉だからこそ──こんなにも、愛おしいのかもしれない。