甥をなだめる藤原武徳。

「しかし、本当に大変な事になった。」

いつの間にか、武徳の額には、汗が滲み出ている。

「あのじゃじゃ馬は、この事を、知っているのか?」

「いえ……知らないと思います。」

そう言う事にしておいた方が、何かと都合がいい。


「だとしたら、早速じゃじゃ馬に……」

「叔父上。」

依楼葉が、藤原武徳を止めた。

「答えは、先程の同じです。依楼葉は、今修業中の身。余計な事を吹き込んで、惑わせたくはありません。」

「しかし!」

藤原武徳は、扇を細かく振り出した。

「帝が欲しているのだぞ!今が最大の好機だと、思わぬか?」

「だからこそです。帝の元へ入内となれば、尚一層修業が必要でしょう。」

「うむむ……」

依楼葉の尤もな意見に、右大臣・藤原武徳も、左大将・藤原崇文も、黙り込んでしまった。


「父上様には、私からそれとなく、申し伝えます。」

「そうだな。」