その表情の変化を、太政大臣・橘文弘は、見逃さなかった。

「これは、これは……春の君は、どこか姫君らしいところが、あるのですね。」

「えっ?」

依楼葉と橘文弘は、顔を合わせた。

「まあ、咲く花も、照れて桃色に染まる帝の事ですから、公達達もお心奪われるのは、当然の事。」

「いや……」

要するに相手が男でも、夜の相手として帝を見ているのかと、言いたいのだ。


「なんだ、春の君。そう言う趣味があったのか。」

少し離れて座っていた、藤原崇文が驚く。

「馬鹿を言わないで下さい。私に、男色の趣味はないですよ。」

依楼葉は、咲哉の為にも、強く否定しておいた。

「この話は、誰でもない依楼葉の事で、相手はあの帝なのですよ。自分の事のように、思い悩んでしまいます。」

「そうなものかのう。」

右大臣・藤原武徳も、これには呆れた。

「双子とは、そう言うものですよ。」

依楼葉は、自慢げに言った。