「どうやら、帝の恋患いは、本物のようだ。」

橘文弘は、細い目で五条帝を見た。

これは、帝に入る隙になる。


「如何でしょう。私に、任せて頂いては。」

五条帝は、急に顔を上げた。

「しかし、叔父上にそのようなお手を、煩わせては。」

「ほほほ。この橘文弘。お上の為でしたら、いくらでもこの身を削りましょう。」

五条帝は、苦笑いだ。


「……この太政大臣に、お任せあれ。」

そう言って橘文弘は、スクッと立ち上がった。

「あっ、叔父上。」

「ふふふ。私が得意なのは、政だけではございませぬぞ。」

含み笑いを見せながら、橘文弘は昼の御殿を後にした。


それを見計らって、蔵人達が戻って来た。

「お上、大丈夫ですか?」

「ああ……」

五条帝は、ニコッと笑った。

「叔父上は、恋の事になると、お節介をやくらしい。」

そう言って五条帝は、軽くため息をついた。