依楼葉は断ったが、綾子は離れようとしない。

「そうは申しても、私から来なければ、春の中納言と結ばれはしないでしょう。」

その言葉に、依楼葉は飛び上がる程、驚いた。

「む、結ばれるって!?一体、何を考えているんだ!我はそなたの姉君の夫だぞ!?」

「あら、構いません。」

「はあああああ!?」

綾子は、自分の気に入った殿方がいれば、いつでも恋愛を楽しむ自由人なのだ。

年に一度しか会わない事も、四六時中。

だから、”織姫の君”なのだ。


「さあ、今夜は楽しみましょう。」

目の前に伸ばす綾子の手を、依楼葉は掴んだ。

「いい加減にして下さい。我は、病み上がりで病弱なこの身を、変わらず思うてくれる妻を、裏切るつもりはない。」

はっきりと、依楼葉は言い放った。

そうなのだ。

この前寝ている間に桃花が言った事、依楼葉は聞いていたのだ。


それを聞いて綾子は、はぁーっとため息をつく。