「はい?」

依楼葉は、ドスの利いた声で、返事をした。

「いやいや。さすがは見る目があると申したのじゃ。」

小さい頃から、いろいろ騒がれているところを見られているので、武徳の依楼葉への印象は、”じゃじゃ馬”からなかなか、変わらないようだ。


「どうだろうのう。一度、依楼葉と崇文を、会わせてやるのは。」

依楼葉は、迷った。

女の身成りで会うのは、今、一番難しい事だ。

「義父上。依楼葉には、まだ早いお話だと思います。」

「そうか?我が娘の桃花は、同じ年には、そなたと結婚しておったがのう。」

「妹は……まだ、子供なのです。自分から会いたいと言うまで、待っては頂けないでしょうか。」

右大臣は、扇を広げた。

「……そなたがそう言うのであれば、そうしよう。」

「申し訳ありません……」

そう言って、依楼葉が頭を下げた時だ。


遠くから、右大臣を呼ぶ声がした。

「父上!」

その声の主は、藤壺の女御に仕える綾子だった。